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五話 昔々のお話

深夜でも朝でも無いですね。

すみません

 ―――討伐に派遣されたアサヒ率いる東兵達は、目の前で起きている光景に唖然として動けないでいた。

 幾多の触手を自由自在に動かすタコの魔獣を相手に、まるで空を飛んでいるように避けては、片手に持った大きなナイフでタコを削っている人物。

 被っている外套が風によってヒラヒラと揺れ、たまにフードからその人物の顔も見えたりした。

 そのチラッと見えた横顔に、アサヒは思わず見惚れてしまった。


(……っ。いかんいかん、何見惚れとるねん、阿呆。ここで戦わんかったら、東帝国兵の名折れやろが)


 戦っている相手を見惚れるなぞおかしな話だ。アサヒは顔をブンブンと振ってから、刀を鞘から引き抜いた。


「ワイだけ行く。お前らは後方支援せい!」


 アサヒの言葉に兵士たちは良い返事を返した。

 兵士たちが動き出すのを見て、アサヒも魔獣へと突貫した。


「おい! あんた! ワイが助太刀しちゃる、どうにか息合わせてくれ!」


 戦っている人物に声をかけて、アサヒは向かってくる触手を一刀両断した。刀の刃の向き通りに縦に裂けながら真っ二つに触手が分たれた。


「なんや柔いやんけ、んなら余裕や!」


 向かって来る触手を全て斬り裂きながら、魔獣本体へと迫っていく。

 そんな時だった。ガキンッ! と金属同士がぶつかり合い、鼓膜を劈くような音が鳴り響いたのだ。


「おわっ」


 見るとそこには先程の外套を被った人物が居た。どうやら触手を切り続けている間に、距離も

 外套の人物が驚いた顔をして立ち止まるが、アサヒは構わず魔獣へと向かい始めた。が、腕を掴まれてしまった。


「な、なんや?」


 外套の人物の顔を窺いながら、アサヒは声を掛けた。

 だが外套の人物の顔を見て直ぐに嫌な顔を浮かべた。


「さっきからなんやねん……あなたは!」


 と自分と似たような口調で声を掛けると同時にキッと睨んできたのだ。


「な、なんやねんて……。助太刀言うたやろ?」

「邪魔や言うてんねん! うち一人でどうにか出来るわ!」

「な、なんやねん、善意でやっとるんやで⁉︎ こちとらぁ!」

「ありがた迷惑やねんて!」


 やいのやいのと、魔獣を前にかなり激しく言い争う二人に、アサヒの兵士たちはおろか魔獣さえも困惑していた。

 蚊帳の外にされた魔獣が怒ったのか積極的な攻撃を仕掛けた。触手がうねりにうねり、二人へ超速で迫った。


『鬱陶しいわ‼︎』


 二人の完璧にハモった怒号と、完璧に同じ動作の技が炸裂し、二人に迫っていた触手が細切れになって地面へと落ちた。


「こないな男初めてやわ」

「人の善意を無碍しよる女もやがな!」


 ギリギリと歯を鳴らし威嚇し合う二人。一見無防備に見えるが、実際相対している魔獣からすると隙が一切無いのだった。


「魔獣の触手と間違えて切られんとええな〜」

「……っ。そっちこそ、性格が触手みたいにひん曲がってっから切られんように気を付けときや!」


 買い言葉に売り言葉、これほど綺麗に体現できるペアはそうそう居ない。

 しかもこれが初対面なのだからすごい。

 二人は自分達の武器を構えて魔獣へと走り出した。スパスパと二人は触手を斬り裂いていき、二人の通った後には魔獣の触手が落ちていく。

 途中途中、アサヒが外套の人物へ斬りかかったり、外套の人物がアサヒに斬りかかったりと、なぜ初対面でそこまで息ピッタなのか、傍観する兵士たちや魔獣は疑問に思うのだった―――。

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