四話 戦いの前の雑談
遅れてすみません!
キャラバンなんかよりも多くの馬車が舗装された街道を進んでいく。そんな中の一つの馬車の中に、葛葉は乗っていた。
両隣には律と五十鈴、膝には鬼丸が乗っかっており、鬼丸の頭で少し隠れた目の前には、アサヒとミハヤが並んで座っていた。
「……あの」
目の前の二人に声を掛けると、二人して葛葉の顔を見やった。
ガタガタとゴンゴンと外からなる音に、葛葉は苦笑を浮かべながら二人に、
「一さんは中に入れないんですか……?」
と他よりもちょっと豪華なこの馬車に取り付けられている小窓の外、外に居るはずの一の威嚇が葛葉には耳元で聞こえてきていた。
狂犬のような顔で馬車を叩く一に、周りの兵士やら冒険者、サポーターとして付いてきたギルド職員たちが宥めようと苦労していた。
「かまへんかまへん、勝手に張り付いとるだけなんやからなぁ」
といつもの笑みを浮かべアサヒは小窓に顔を向けた。同時にガンッと今までに無い大きな音が馬車の中に響いた。
「おぉーこっわ」
アサヒの見ている窓を葛葉も見やると、そこには真顔でありながら殺気だった眼光でアサヒを見つめる、一がナイフを窓に突き立てていた。
笑ってる場合ですか、と言いたくなった葛葉だったが、鬼丸の頭を撫でて押し黙るのだった。
「……鬼代殿は一殿とは仲が良いのか?」
鬼丸の頭を撫でていると、ミハヤが外に居る一を見てから葛葉へ声を掛けて来たのだ。
「あ、そうですね。前に面倒を見てもらったんです、その時からですね」
「なんや、あいつが人の面倒見れるとはなぁ」
葛葉の言葉にアサヒが大きな声でそういうと、更にガンガンと強く音が鳴り始めるのだった。
「アサヒ、流石に煽り過ぎだぞ?」
「えぇ〜そうですかね」
先ほどから一を煽りまくるアサヒに、遂にミハヤが止めに入ったのだ。
だがアサヒは笑みを絶やさず薄ら笑いを浮かべたままだった。
「んでも事実なんでね、ワイがこんな反応すんのもしょうがないっちゅうもんすわ」
と真面目な顔で言った。
葛葉はもちろんミハヤも昔の一のことはあまり知らない、故に誰かの面倒を見れる見れないすら分からないのだ。
「……アサヒさん。この前の約束覚えてますか?」
「ん? ……あぁしとったなぁそいや、んならしゃーないな。話したる」
この前の約束とは、一の過去話のことだった。
いい機会でもあり、アサヒは頭を掻いたあとにゆっくりと口を開いた。
「あいつと会うたのは、かなり前や。あいつが旅しとる時やった」
懐かしいことを思い出しながら、アサヒは語り始めるのだった―――。
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