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二話 東の巫女

「世間を知らぬなぁ、うぬは」

「ん〜、歴史書は漁ったけどこいうのはね。……もしかして馬鹿にしてる?」


 やれやれと肩を揺らす鬼丸の頭に手を置いて、鬼丸の頭を優しく撫でた。


「彼奴はこの国のトップじゃ。わしと同じ巫女じゃよ」

「……巫女」


 初めて鬼丸以外の巫女と会ったことに、葛葉は不思議な感覚を覚えた。

 本来巫女とは、そうそう会えるような存在ではないのだから。


「じゃが彼奴はわしとはちっと違うのう。わしはこの身で生きながらえてきたのじゃが、彼奴は違う」

「違うって?」

「彼奴は生まれ変わりを繰り返しておる。外見から分かる通り奴の種族は『妖狐』じゃ、本来ならわしと同等の年月を生きながらえる長命種じゃが……」


 と自分の身体を親指で突く鬼丸。

 鬼丸は鬼族で、あの少女は『妖狐』というあまり差のない種族だった。


「彼奴が……違うかの。彼奴の先祖がこの国を再び興そうとした時に戦った相手が不味かった。妖狐族の妖術、大賢者の魔法だろうと、防げぬ不可避の『呪い』を受けたのじゃよ」


 東帝国の歴史は長い。遥か昔から巫女やこの国を導いてきた者たちとは別の統治者が居た。故に四千年という長い間、国の本当の統治者が変わることのない日々が続いたのだ。

 だが今から何百年前に、この国に厄災が産み落とされたのだ。鬼丸の話は、その話だった。


「確か、彼奴の血統は二十になると衰弱死する呪いじゃったかのう。……あの娘、あと四年かの」


 鬼丸の言葉に葛葉は息を呑んだ。

 異世界ファンタジーモノならありありな設定。ありあり過ぎる上、悲しすぎる設定だ。

 その上この世界に、チート持ち主人公は存在しない。だから、あの少女を救う者はいない。


「同情するでない、彼奴の血統が続いておるということは、呪いに屈した訳じゃあるまいて」 


 理不尽に怒りを爆発させ、肩を振るわせる葛葉を宥め鬼丸は、人の前に立つ少女を見やった。


「……皆さん。どうか死んで下さい! 私達の愛するこの国は、瀕死の状態です。国民は恐怖に怯え、食料品の備蓄が着々と減っていっております」


 巫女の言葉に動揺するものはこの場には居なかった。


「死の覚悟の仕方など知らない国民が、このままでは1人2人と最悪な死に方をしてしまう。……何度でも言います。この国は今、瀕死なのです」


 邪竜によるインフラの破壊、兵、冒険者達の派遣に伴う物質等の供給。国民と兵と冒険者達への供給を長期間続けることは出来ない。

 これは馬鹿な冒険者ですら理解できる事だった。

読んで頂きありがとうございます!!

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