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三十四話 呆れられたら終わりだよね

 葛葉の本音を言ってしまえば、ただ単に自分に甘えて来てくれる五十鈴を見てみたいと言う、好奇心だった。


「……あ、葛葉様。掃除は私が……」

「いやいや、私のせいでもあるんだしさ。手伝わせて。というか、手伝わないと」


 汚してしまった自分がやるべきと、言う葛葉に、五十鈴は渋々残りの掃除を任せるのだった。

 五十鈴は血を吸った雑巾をバケツの中の水に入れ、ギュウウっと鬼の馬鹿力で絞った。薄い赤色のシミにはなってしまうが、これくらいなら洗剤と一緒に手洗いすればすぐに落ちるだろうと息を吐いた。

 目の前で血を拭いている葛葉を見やって、律と鬼丸の顔を思い浮かべた。


(私が、一番遠いのですね……)


 尊敬する葛葉と自分の距離が遠いことに、五十鈴は乾いた笑みを浮かべた。


(このままでは、置いて行かれてしまいますね……)


 葛葉の背中を眺めるだけでも出来ている今が、なくなってしまう。そんな思いに、五十鈴は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


(現状をどうにかするには、なにか行動に移すべき……なんですね)


 五十鈴は意を決して、葛葉の言われた通りにいつか甘えれるよう、顔を引き締めるのだった。

 そうこうしているとガチャッと扉の開く音が聞こえてきた。目を向けると、湯気を立ち上らせながら満足げな表情をしている鬼丸が居て、風呂から帰ってきたのだ。


「ふぃ〜やっと落ちたのじゃ〜。……葛葉よ〜、機嫌悪くなっとらんかのお?」

「え、あ〜。悪くなるならない以前にさ、キモ過ぎたからもう良いかなって」

「それって呆れておるじゃろ⁉︎」


 「え、全然」と口で言っていても、葛葉の顔はそうは言っていなかった。葛葉は完全に呆れてしまっているのだ。


「よし、終わり〜」

「お疲れ様です、葛葉様」

「お疲れって言われてもねー、自分でやって自分で片付けただけだからね〜」


 たははと笑う葛葉から雑巾を受け取り、五十鈴は先程同様に血を吸った雑巾に水を含ませ、馬鹿力で絞る。

 ネジ切れそうな音が鳴り、少し不安に思いつつも、血の色が薄まるまでそれを繰り返した。


「鬼丸〜、もう寝るよ〜?」

「まだ21時じゃろ〜、わしは寝とうないのじゃ!」

「邪竜討伐の日まで、体力は有り余る程に温存させないといけないの〜」


 葛葉が鬼丸を畳の部屋に連れて行こうと引っ張るが、鬼丸は抵抗して寝ようとしない。

 片手には酒瓶があり、この後飲むつもりだったのが見てわかる、顔にも出ているから。

 五十鈴が洗面所から戻り、流れるように鬼丸の酒瓶を没収。「あっ」と情けない声と共に涙を目端に溜めてグズリそうな鬼丸を抱き抱え、畳の部屋の布団へと寝かした。


「すっごい……職人技だ」

「のじゃー‼︎ わしは寝んのじゃーっ!」


 布団をかけられながら抵抗する鬼丸だったが、次第に抵抗が弱まっていき、瞼が半分閉じかかって、ボソッと文句を呟いてから完全に瞼が閉じるのだった。


「……呆気な〜」


 普通に眠りに就いた鬼丸に「えぇ……」っと困惑する葛葉だったがすぐに自分も寝ようと、空いている最後の布団の中に入るのだった。

 右に律、左に五十鈴、五十鈴の次が鬼丸という形だった。


「葛葉様、おやすみなさいませ」

「うん、おやすみ〜」


 五十鈴のその声を聞いてから、葛葉は明日からの邪竜討伐前の準備

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