二十八話 伴侶なのだから
それから暫くして、ギルドの姿が見えてきた頃に背中をトントンと叩かれたのだ。
「どしたの?」
「これを律に渡すのじゃ」
そう言い鬼丸がポケットから取り出したのは、十字のアクセサリーだった。金色でも銀色でもない、黒色の光沢を放つアクセサリーだ。
「アクセサリー? ……鬼丸も律のことが好きになったの?」
「何を言うとる、わしは葛葉一択だけじゃぞ?」
当たり前のことだ、と言わんばかりの顔をして、鬼丸はそのアクセサリーを葛葉に手渡した。
受け取ったアクセサリーを見て、葛葉は何か引っ掛かる気がしたが、気にせずギルドへと向かいつつ、鬼丸へ尋ねる。
「で、どうしたの? このアクセサリー」
「ん、それは凛楓から律に渡しとくれと言われたんじゃよ。なんなのかは、わしも知らぬ」
鬼丸にアクセサリーが何かを聞いても、預けられたと言うことしか分からず、葛葉は「ふーん」と声を上げポケットへと仕舞い込んだ。
余談だが、鬼丸に何かを預けるということは後悔する覚悟を済ましておかないと行けないことで、凛楓は幸運なことに後悔することは無くなった。
「葛葉よ」
「んー?」
前を向きながら歩く葛葉に鬼丸は声を掛けた。葛葉の胸を揉むのを再開せずに、顔を横に向け頬を葛葉の背中にピッタリとくっ付けて。
その声に葛葉が応えると、かなりの間を開けて鬼丸が再び声を上げた。
「本当にやるのか?」
「……? 邪竜討伐のこと?」
「うむ。討伐に参加するのは良いのじゃが、やはり心配でのう? 葛葉は怪我が多いからの、複雑な気持ちじゃ……」
鬼丸のそんな言葉に葛葉は失笑してしまった。
葛葉は今鬼丸がしてるであろう表情を思い浮かべながら、優しい声で鬼丸に語り掛ける。
「怪我はどうしようもないけど……大丈夫、今回戦うのは邪竜の取り巻きとだから」
鬼丸の複雑な気持ちを葛葉は完全に、完璧には理解してやれないが、それを楽にさせることは出来る。故に、安心させられるようなことを言うのだった。
鬼丸は黙りで何も返ってこない時間が数分続いた。
「私が危なくなったら、鬼丸は助けてくれる?」
「……っ、当たり前じゃ! 葛葉が危ない状況になったならば、わしは目の前の悉くを破壊し、葛葉の下に向かうのじゃ‼︎」
葛葉の言葉に黙りだった鬼丸がバッと起き上がり、ジタバタジタバタと暴れながら宣言したのだ。
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