二十五話 気配がする
改めてヘレンの姿をみて、葛葉はハハっと乾いた笑みを浮かべた。
推定175はある身長に、一と五十鈴よりも大きい胸。どう考えても力じゃ圧倒的に負けてあるであろう体躯だった。
「? ドウカしましたか?」
「あ、いえ何も」
ついマジマジと見てしまい、不審に思われたのか、ヘレンが声を掛けて来たので、葛葉は咄嗟に目を逸らした。
逸らした先、金の鎌と槌、金の縁取りを持つ赤い五芒星が描かれたTシャツの上に、赤いパーカーを着た少女と目が合った。
なぜか軍帽を深々と被っている、色々と危なそうな少女だ。
(触れていいのかな……)
危険な香りしかしない少女に葛葉はぎごちなく笑みを浮かべた。
「あの……」
「ん、あ、アレですか? あれは祖国ジャンキーって名前デース!」
「違うわ!」
軍帽少女の頭に手を置きニコッと笑みを浮かべて、そう口にするヘレン。そんなヘレンに間髪入れずに軍帽少女が声を上げた。
「私はアーシャ・ヴェロニカ。アーシャって、そう呼んでくれればいい」
「はい、分かりました」
恥ずかしそうに軍帽のつばを掴んで、軍帽をさらに深く被るアーシャ。
そんなアーシャの頰をヘレンが両手で押さえた。
「そんなデハ、かわいい顔が見えないデスヨ?」
「見えなくていいの!」
帽子を脱がそうとするヘレンと取っ組み合いになり、二人の間で火花が散った。
身長差的に勝ち目はないだろう。なんといってもアーシャは、全体的にヘレンとは真逆なのだ。
色白の肌に深い青色の瞳、軍帽からはみ出ている毛の色は白色だった。葛葉よりも小さい身長に、絶壁の胸と。
ヘレンとは真逆の外見をしていた。
「も〜恥ずかしがり屋さんデスネ!」
「うるさい!」
ヘレンが渋々手を引きそう吐き捨てるが、アーシャは気にも止めず、軍帽を整えた。
「仲良いんですね、お二人は」
「ハイ! とっても!!」
「なっ……! そ、そんな訳……!」
葛葉の言葉に満面の笑みで同意するヘレンとは逆に、否定しようとしたアーシャ。最後まで言う直前に、ヘレンのキラキラとした目に見つめられ口を噤んでしまった。
「アーシャ、私とは仲良くなりたくないんデスカ?」
「うっ……‼︎ そ、そりゃ、と、当然……うっ!」
「そんな……酷いデス!」
ガシッと抱き着かれ顔面蒼白になるアーシャ。
死を覚悟したかのような顔を葛葉に向け、手を伸ばし助けを求めようとしたが、
「こうなったら、意地でも仲良くなりマス!」
抱き抱えられギルドの2階へと連れ去られて行ってしまうのだった。
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