二十三話 広い部屋、ツインベッド、畳の部屋
何も起こらない訳がなく……?
―――作戦会議が終わり、各々は四日後の邪竜討伐戦までじっくりと休息を取ることとなった。
「ここでありんす」
サワに連れられて着いたのはとある一室だった。オリアギルド支部と同じような間取りの。
「何かありんしたらギルド職員かわっちに言ってくんなまし。……それと、今の内に他の冒険者や兵士の人達と話しておきなんし」
部屋の案内を済ませたサワが去り際に、葛葉へそう耳打ちして行った。
色っぽく艶のあるあの声で耳打ちされた葛葉は、それどころではなかったが。
「あ! 葛葉さん! 見て下さい!」
と先に部屋の中に入っていた律が葛葉の手を引き、共に中へ入っていく。
入るとすぐに感じ取った。
「広い……」
オリアギルド支部よりも遥かに。もはや一軒家の一階並みのその部屋であることに。
畳の部屋もきちんとあり障子や襖で区切られている、和風と洋風が綺麗に分けられていたのだ。
「凄いですよ!」
タタタと律が余裕で走れる広さで、五十鈴はその奥の畳の部屋で既に寛いでいた。
「これくらいなら困らないか……。あぁでも、律はお母さん達と一緒に寝泊まりするの?」
「あ……いえ、私は葛葉さん達とここで寝泊まりします!」
律には家族が居て、そこで寝泊まりするのかと葛葉は思っていたが、一瞬の逡巡ののちに律は、葛葉達と共にいることを選んだ。
その答えに葛葉は少しだけ驚いたが、すぐに律のことを真っ直ぐ見やり声を掛けた。
「うん、分かった。……私は鬼丸を連れて来るから、凛楓さんに話しとく?」
「すみません葛葉さん、何から何まで……」
「いいんだよ。律が居なかった分、暇だったからさ」
「え! 私ってそんなに迷惑かけてましたか⁉︎」
葛葉の言葉に驚きと憤慨が混じった声を上げる律に、葛葉は微笑んだ。久しぶりのこの会話は、葛葉にとって楽しく、嬉しかったのだ。
「それじゃあ行って来るから。二人も好きにしてていいからね」
「はい!」
「お気を付けて」
律が元気のある声で返事を返し、五十鈴が出ていく葛葉に一礼した。
ギルドの中なのだから対して何も起こらないだろうが、葛葉は少しばかりの不安を感じながら部屋を後にするのだった。
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