三話 今の師
弟子入り多くない?
「……」
「……」
「……」
借金取り合わせ三人が沈黙し、誰かが話を切り出すのを待ってると、お客さんの相手をしていた元借金取りリーダーが露店の中から外に出てきた。
「おーい、何やってんだよお前は……」
「……お前等、こんなとこで何やってんの?」
リーダーが固まってる元部下の肩を叩き愚痴をこぼすように言い、葛葉達に気付き固まる。
そこで葛葉が元借金取り達へ問い質した。
「……こ、この前は」
「この前?」
借金取リーダーの手が小刻みに震え、言葉を詰まらせながら身体を構える。
そんな最中葛葉はこの前? と何かあったっけ? と疑問が浮かんでいた。そして、数瞬してあっ! あれか! と思い出した瞬間。
「この前は申し訳ございませんでした‼︎」
綺麗な飛び込み土下座を借金取リーダーが繰り出した。
葛葉、律はポカーンと口を開き状況に追い付けていない。そして借金取リーダーに倣い部下が土下座をする。
「俺等! 心を改めて! 姐さんに着いて行きたいです‼︎」
そんな借金取リーダーの提案を、葛葉は考慮もせず即答で、
「嫌だ、要らない、臭い、どっか行って」
罵詈雑言で一蹴した。
――三十分後――
「で? 力には自信があったけど、私達にコテンパンにされたから改心して、一から強くなろうって?」
「は、はい」
頬杖を付きながら葛葉はリーダーから聞かされた考えを、所々端折って確認する。
その隣には串焼きを頬張る律もいる。
「それでなんで、私に着いてくる必要があんだよ」
「い、いや。やっぱり俺等の憧れは、姐さんなんで!」
「キモっ」
「ひ、酷く無いっすか!?」
無慈悲な葛葉にリーダーは悲痛に満ちた声を上げる。
正直言ってこんなチャラそうな男にこんなこと言われたら、キモ過ぎて吐き気を催す。見た目三十だぞ?
「……はぁ、もう私は弟子は取らないし、誰かを導くなんて大層な事は言わない」
「そ、そんな! じゃあこのガキは⁉︎」
「ふぇ? わらひへふか?」
律は自分が指されたことに、バクバクと吸い込むように食べていた手を止めて、キョトンと首を傾ける。
「律はパーティーメンバー」
「えっへん!」
「そ、そんな……」
嬉しそうな律の頭を掴み引っ込ませ、落ち込んでいるリーダーに何か声を掛けようかと思うが。励ましの言葉なんて思い付かず、どうしようもない。
リーダーの部下もなんとか励まそうとしているが、掛ける言葉が無いんだろう。
一時の静寂が生まれる。
「というか葛葉さんは弟子をとったことあるんですか?」
「え? まぁ一回だけ」
「その人は今も師弟関係なんですか?」
「……いや。そいつはもう旅に出たよ」
ラグスは一ヶ月前にこの地を去り、強くなる旅に出た。弟子が強さを探求しに行ってるのに、師は同じところに留まってるばかり。
本当、つくづく師ってのは何か分かんなくなっていく。
読んでいただき、ありがとうございます!
ラグス以外に多分弟子は取らないですね。