表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
469/753

一話 小手調べ

「―――五十鈴、盾!」

「はいっ‼︎」


 葛葉の声が響くと同時に、ガゴォン‼︎ とそうそう森の中では聞けないような音が轟いた。

 木々が薙ぎ倒され、五十鈴の身体が吹っ飛ばされた。


「っ。鬼丸!」

「まっかせいのじゃ!」


 相手していた魔獣の頭部を金棒で粉砕し、鬼丸は葛葉と五十鈴が二人掛りで戦っていた魔獣へ立ち向かう。

 五十鈴が戦闘復帰できるまでの間、葛葉はポーションを飲み干した。


「あーもう、『想像』使いたい!」


 いちいち立ち止まってポーションを飲まないと回復できない不便さに、葛葉は苛立ちを表すように地面に殻になった瓶を投げ捨てた。


「鬼丸様、復帰します‼︎」


 今の葛葉が頭痛を引き起こさずに作り五十鈴に渡していた、超簡易的な胸当てがボロボロになった五十鈴が、鬼丸と共に魔獣と戦い始めた。

 そんな光景を目にしていた葛葉が、今から三十分ほど前のことを思い出した。



 ―――三十分前

 目の前の景色が真っ白から、新緑の緑へと変わった。

 先ほどまでの浮遊感がなくなり、今は両足できちんと立っている感覚がした。


「着いたのじゃ〜」

「鬼丸様、先に行かれては……!」


 はしゃいで走り出す鬼丸の後を追う五十鈴。五十鈴に迷惑を掛ける鬼丸に、葛葉がため息を吐いていると、何かの咆哮が上がった。

 長く獰猛な咆哮が。


「っ。五十鈴、構えて。……2時の方向に!」

「はいっ!」


 ドスンドスンと大き過ぎる足音に、全方位からやって来るのではと思ってしまうが、葛葉は冷静にそして正確に足音を聞き分け、向かって来る方向を割り出した。

 ドダダダと足音が迫り来る音と木々が薙ぎ倒される音が森に響く。

 そしてその何かが姿を現した。


「『レッサードラゴンレックス』⁉︎」


 鬼丸が驚き声を上げた。

 葛葉と五十鈴の顔が強張るが、直ぐに身体を動かした。


「葛葉よ、奴は俊敏じゃ! ワシと五十鈴では追いつけん! 一人で持ち堪えれるか⁉︎」


 巨大な尻尾が振り下ろされるが、それを鬼丸が金棒で受け止め、葛葉に情報を伝え戦い方を提案した。


「わかった!」

「うむ! 五十鈴よ、ワシらは雑魚をやるのじゃ!」

「はい!」


 一際大きな魔獣の周りにいる小型の魔獣達。大型魔獣と変わらぬ獰猛な顔で、葛葉達を睨んでいた。

 並びの悪い鋭い牙から涎が地面に垂れ落ちた。


「クックック、面白いのじゃ……ワシを餌だと思っておるのか、貴様等。醜悪な劣等種如きが、頭が高いのじゃ、平伏せよ」


 涎を垂れ流していた魔獣達が、殺意を高める緋月を見て途端に丸くなっていった。

 飛びかかろうとしていた四本の脚がガクガクと震え、今にも逃げ出しそうであった。

 二人が同時にツノを顕現させた。どうやら本気で殺りに行く気なのかと、葛葉は苦笑を浮かべた。


「……よし。んと、私は、この魔獣とか……」


 見上げてしまう程の巨躯に葛葉は頰を引き攣らせた。どう考えてもまともに戦えそうになかったからだ。

 だが鬼丸は葛葉に任せた。それは葛葉だけでも討伐可ということ。

 ナイフを創造し構える。魔獣が血走らせた目で葛葉を睨み付け、そして耳を劈く咆哮を打ち上げた。

読んで頂きありがとうございます!!

面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ