二十二話 あの子を信じている
少なめですいやせん!
―――都市間転移魔法の光が収まり、静寂が部屋の中を包み込んだ。
「行っちゃいましたね……」
「大丈夫なんでしょうか」
「いくらなんでも無茶だったんじゃ……」
ギルド職員達が各々好き勝手に、不安の言葉を吐きはじめた。
不安な気持ちは当然であり、それを言わせなくするのは間違いだろう。
「……さぁ、私たちは私たちのやるべきことをしよう。サポーターなら、サポーターらしくね」
パンパンと手を叩き、ギルド職員達を黙らせた葉加瀬が、白衣のポケットに手を突っ込みながら、そう口にした。
部屋を去ろうとする葉加瀬に、一人のギルド職員が声をかけた。
「副長は、これでよかったんですか……?」
そんな職員の恐る恐るな質問に、葉加瀬は振り返って間髪入れずに答えた―――。
―――映像投影魔法が途切れ、【英雄】への激励で騒がしかった場の雰囲気が暗くなっていく。
そそくさとギルドの中に入って行こうとする緋月を見て、男性冒険者が慌てて緋月を呼び止めた。
「お、おい、ギルド長、あんた。これでよかったのか?」
男性冒険者の恐る恐るな質問に緋月は、顔をゆっくり上げて口を開いた。
『―――全然。いいわけないじゃん』
そんな二人の言葉が離れた場所であっても一つとなった。
ギルド職員達が葉加瀬のいつもの口調ではない口調に驚く。冒険者達が緋月の微かながらも、失神しそうなほどのドス黒い感情に後退りする。
が葉加瀬は、緋月は、さらに続けた。
『けどね』
「ボクは」「私は」
『あの英雄を信じている。盲目的と言っていいほどに、あの英雄があの鬼代葛葉である限り』
一人称以外の一言一句を違わず二人の声が重なった。
その言葉一つ一つが力を持っていた。
英雄を盲目的に信じている者の目とは思えない瞳で―――。
読んで頂きありがとうございます!!
これにて五部二章は終わりです!
次は三章、三章もかなりボリューミーになると思いますので、どうかお楽しみにしていてください!
面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をお願いします!!