二十一話 ぱぱっと英雄に
―――大きな魔法陣が床に刻まれている大きな一室。
その傍では魔法の準備をするギルド職員達が居た。
「これから君たちを極東連合国、総合統括国家東大帝国。その本州西部にある出雲国に転移魔法を使って送る」
「……地名が物凄いそのまんま」
葉加瀬の大切な説明を、静かに聞いていた葛葉だったが、あまりにも地名がそのまま過ぎることに、流石にツッコんでしまった。
「まぁ、それは極東を統一して統治した人が、私達と同じだからね。……こほん。送ると言っても、現在あちら側の転移魔法陣は魔獣に制圧されたらしく、君達には石見国の魔法陣に送るよ。出雲からは近いから、直ぐに出雲に着くとは思う」
目を泳がせながら言う葉加瀬に鬼丸が疑いの目を向けた。
「副長、終わりました」
「……どうやら、もう出発みたいだね」
後ろに振り返ってみるとそこには、魔法陣の準備が整い後は起動させるだけで、やることのなくなった職員達が、葛葉達のクエストへの出発を見送れるように一列に並んでいた。
「……最後に一つだけ」
歩き出そうとした葛葉達の背中に、葉加瀬が凛とした声で掛けてきた。
「無事に帰ってきてね」
いつもの凛とした表情を崩し、葉加瀬は微笑みながら葛葉達の背中を見守るのだった。
―――魔法陣の上に立ち、三人は見送ってくれる葉加瀬達を見やった。その目は、世界を救ってくれと、そう言ったような目だった。
その光景に葛葉は内心、アルマゲドンの主人公ってこんな感じだったのかな、と思ってしまった。
そうしないとこの重荷に押しつぶされてしまいそうだから。
『あ、あー!』
そんな時だった、葛葉達の目の前に映像投影魔法のホログラムが現れたのだ。
そして画面中央の緋月が「映ってるかな」と独り言を呟いていた。
『あ、こほん。……葛っちゃん、頑張ってきてね!』
飾りっ気もなくシンプルに、グッと親指を立てニカっと笑いウィンクする緋月が、画面から離れると、緋月の後ろはギルドの受付所や食事する所が映っていた。
そしてそこはびっしりと人で埋め尽くされていた。
『嬢ちゃん! 邪竜なんか、ぱぱっと倒してきな! そしたら俺らとまた飲み交わそうぜ!』
とあの男性冒険者を起点として、次々に冒険者達が葛葉に、葛葉達に激励の言葉を投げかけて来る。
『頑張れよ! 俺らの、この街の【英雄】‼︎』
最後にその言葉が聞こえたと同時に、葛葉の目の前が真っ白になった―――。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価をお願いします!!