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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第五部 二章——いつだって気を抜いてはいけないんだ——
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十六話 二人

「ヤンデレ小娘が攫われた後にこれじゃからな。……吹っ切れたといえ、あの時の後悔は、葛葉の魂に刻まれてしまっておるからのう。……酷なことをしおった」


 律はキツイお仕置きを受けなくてはならない。それが今の葛葉にしたことの償いなのだから。

 二人は顔を引っ込めてゆっくりと扉を閉めた。


「葛葉は寝るかのう?」

「どうでしょうか……。ですがもう夜も遅いですし」

「そうじゃな、ワシらも寝るとするかのう」


 自分達の部屋の方に足を向けて、後ろ髪を引かれながらも歩き出した。その時だった、ガチャッと背後から扉の開く音が鳴った。

 振り返ると、虚な瞳の葛葉が扉を開けて、二人のことを見ていた。


「……く、葛葉様?」

「ど〜……どうかしたかのう……?」


 葛葉の虚な瞳は結構怖く、二人は自然と後退りながら葛葉に声を掛けた。

 だが葛葉は一言も声を発さずに、二人へヨロヨロと近寄った。そして二人の手を取り、少し強引に部屋に引き摺り込んだ。

 二人が疑問に思い顔を見合わせている最中も、葛葉は二人を引っ張る。

 そしてベッド前に連れてくると、二人に抱き着き一緒にベッドへと倒れ込んだ。


「く、葛葉様⁉︎」

「おぉ〜葛葉よ、遂に3Pをする気じゃな!?」

「鬼丸様⁉︎」


 葛葉の行動に驚き、声を上げる五十鈴。そしてさらにこんな時でもふざけたことを抜かした、鬼丸にも五十鈴は声を上げた。


「……かないで」

「……?」

「葛葉様……?」


 今まで一言も声を発さなかった葛葉がボソッと何かを言った。最初の方が聞き取れなかった二人が疑問符を浮かべる。

 が直ぐに葛葉がもう一度ボソッと呟きはじめた。


「二人は……どこにも、行かないで」


 ギュッと二人を抱きしめる力を強く込めながらも、葛葉のその声はとてつもなく震えていた。

 今にも泣きそうに喉を詰まらせて、生まれたての子鹿のように手を震わせて。


「っ。……はい、不肖の身ではありますが。この五十鈴、最期の最期まで葛葉様の元に居ります。ご安心下さい」


 葛葉の背中に優しく手を添えて、五十鈴は優しい声でそう宣言する。


「……安心せい葛葉よ。ワシがウヌを、伴侶を置いて行くことなかろうて。ワシを信じよ……ワシは葛葉、ウヌを愛しておるからのう」


 葛葉の腕に手を添えて鬼丸は言う。葛葉のことが好きで好きで愛している鬼丸は、一切のおふざけを入れずに。


「一緒にいてやるのじゃ。……安心して眠るがよい」


 二人は葛葉の背中を優しく摩る。不安を払うように。

 あの時、葛葉は何も出来なかった。再び、葛葉は何も出来ないまま失ってしまうかもしれない。

 と葛葉が思っているであろう不安を、二人も感じてしまったのだ。


「よく、眠るのじゃ。寝て、気持ちを楽にするのじゃよ」


 鬼丸の優しい声と、五十鈴の優しい手に、葛葉の不安がほんのりと消えていく。徐々に徐々に。

 ゆっくりと意識がまどろみの中に沈んで行いった……。

 葛葉を抱き締めながら頭を撫でる。

 安らかな寝顔だが、目端が少し赤くなっており、涙の跡もあった。


「全く、ワシの方が優しく声を掛けてやったのに」

「恥ずかしいんですよ、きっと」


 五十鈴に抱き着き、五十鈴の胸の中、温かい抱擁の中で眠る葛葉に、不満気に声を吐露する鬼丸。

 肘枕でジトーっと葛葉を見つめる。


「……フッ、愛い奴じゃのう」


 赤子のように眠りに着く葛葉を眺めて、鬼丸は微笑んでそう呟くのだった―――。

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