十四話 冷静に
「ギルド……ですか」
「あぁ、あの二人ならなんか知ってんじゃねぇかな? ギルド長はどうだかだが。副長は知ってるだろうよ」
「葉加瀬さん……確かに葉加瀬さんなら!」
葛葉が律の動向を知っていそうな人を思い浮かべ、バッと走り出そうとした時だった。
背後からガシッと腕を掴まれた。
「おいおい! 嬢ちゃんよぉ、流石に時間も遅ぇし帰った方がいいぜ? Lv.3に言うのもなんだがよ」
「で、でも!」
「焦る気持ちも分かるし、心ここに在らずになるのも理解できる。けどよ、無茶しちゃいけねぇよ。昨日の疲れだって満足に取れてないだろ?」
と冒険者は葛葉の足元を指差した。
葛葉が冒険者が指差した足元を見ると、自然と足が小刻みに震えていたのだ。
「今にも倒れそうだぜ?」
「……」
律が居なくなった衝撃と焦りによって気が付かなかったようだ。一度意識するとドクンドクンと足に力が届かなくなった。
「おおっと……ほらな、今日は寝て休みな。明日探すんだ」
「……でも」
そうしてる間にも律が遠く遥か遠くに行ってしまうと思うと、今夜寝れる訳がない。
不安で押し潰されそうだと言うのに。寝れる訳が、ない。
「無茶しちゃあ探せなくなっちまうぞ?」
「……っ」
それも一理あった。今無茶してしまえば葛葉は当分動けなくなるだろう。
実際、今の葛葉はスキルの使用が出来ないのだ。
昨日の緋月との戦いで、限界を遥かに超えた『想像』と『創造』の行使によって、スキルを使うと苦痛がやってくるからだ。
「……ありがとうございました」
親身に話を聞いて、葛葉の身を案じてくれた冒険者達に感謝をして葛葉は、ゆっくりと酒場を後にするのだった。
ギィッと酒場の扉が閉じ静寂がやってきた。
「……探すっってもなぁ、無理だろうなぁ」
そんな雰囲気をぶち壊したのは葛葉と話していた冒険者だった。
「もうこの街には居ないだろうしね〜」
「あっちに着いてる頃か。……全く、副長も趣味悪りぃ。嬢ちゃんに教えてやりゃ良いのによぉ」
窓の外にあるギルドを見て、冒険者達はため息を吐くのだった。
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