三話 お酒は計画的に
お酒の幸せスパイラルが望ましいですね!
「あるんですね……」
「残念ながらね」
葛葉がマジかよという表情で葉加瀬に尋ね返すと、葉加瀬はたははと乾笑いを浮かべて微笑んだ。
ますます異世界感がなくなっていく。
「前は飲めなかったろう?」
「……じゃあお言葉に甘えて」
葉加瀬の持っていたグラスを受け取り、葛葉は一口飲んだ。そして数秒の間を開けてから、
「美味しい……」
と声が漏れてしまった。
前世でも何度か酒は飲んだ。レモンサワーしかり梅酒しかり、色んなものを。
だがその中でもこの目の前のレモンサワーは美味しかった。
「今日は奢りだからね」
「奢り……? 誰のですか?」
「この人の」
そう言い葉加瀬は葛葉の車椅子の車輪を指差した。
見てみると見覚えのあるアホ毛と、見覚えのある髪色が……。
「キモ」
「シンプルな悪口っ⁉︎ キモくないよ〜ボクは〜。ただ葛っちゃんとあーんなことやたーんと食べなことをするんだよ!」
葛葉の自然と出た言葉に衝撃を受けた緋月は、モミモミと葛葉の手や二の腕を触りながら言い訳? をした。
が当の葛葉は自分の口から出た高威力の悪口に驚き、自分の口に手を当てていた。
「途中に食事を挟まないで……意味が変わるから」
最後の最後でやはり問題発言をした緋月の頭を、葉加瀬はデコピンで叩いた。
「……いたた。あ! 葛っちゃんがお酒飲んでるー‼︎」
葛葉が手に持っているグラスを目にした緋月は声を大にして驚いた。
その緋月の声にガタガタと椅子に座っていた者達が立ち上がり、飲み比べをしていた者たちも葛葉へ振り向いた。そして全員が葛葉の持つグラスを見て、ぶわッと湧き上がった。
葛葉が飲酒している姿は初な上、葛葉ほどの美少女の酔った姿を見たくないものはいないからだ。
「葛葉よ!」
そして鬼丸が誰よりも早く、一目散に葛葉の下に走ってきてはジョッキを取り出し、お酒を注ぎ始めた。
その姿に葛葉以外の人々に動揺が走った。
「え、鬼丸? それは無理じゃない⁉︎」
と一番近くに居た緋月が鬼丸の行動に口出しした。
すると後ろからも、横からも、四方八方から鬼丸は口出しされたのだ。
「ふっふっふ……なんじゃ、うぬらは見たくないのかのう?」
『……?』
鬼丸の発言に周囲はピンと来ていない。緋月ですらも。そして鬼丸は含み笑いをして、答えを口にした。
「葛葉のベロンベロンに酔った姿をじゃ」
『―――っ⁉︎』
緋月、冒険者に電流走る―――!
鬼丸の発言に葛葉のその姿を想像した……!
「そういう下心あるなら嫌なんだけどな〜」
と勝手に盛り上がる鬼丸と緋月と冒険者達を眺めながら、葛葉は嘆息するのだった。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をお願いします!!