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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第五部 二章——いつだって気を抜いてはいけないんだ——
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一話 戦いの後

 歓声が上がる闘技場から葛葉は退場していった。ギルド職員に肩を貸してもらいながら。

 今、葛葉は『想像』と『創造』を使いまくった反動でまともに歩けず、まともに意思疎通も出来ない状態だった。

 ほぼ意識を失っているのと同義だった。


「お疲れ様」

「副長、ギルド長はどうします?」


 そんな葛葉の前に立ったのは葉加瀬だった。肩を貸していたギルド職員が姿勢を正し、広場にまだ寝っ転がっている緋月を思い浮かべた。


「大丈夫だと思うよ、疲れてるだけだから」


 脇腹や鎖骨を刺されたが、緋月なら直ぐに動き出すだろう。

 今は葛葉の治療が最優先なのだ。


(あおい)(あかね)連れていって」

『はい』


 葉加瀬の背後からメイドの二人が姿を現し、ギルド職員に担がれている葛葉を、どこから取り出したのか担架に乗せて連れ去っていった。

 迷いのない流れるような手付きで。


「怪我の絶えない子だね」

「あれって怪我って言うんですか?」


 葛葉の姿を見送りながらポツリと呟いた葉加瀬に、ギルド職員は疑問を浮かべながらそう口にした。

 外傷はほぼないに等しいのだが、スキルの乱用による精神的、魔力的なダメージが大きいのだ。

 魔力と生命力はイコールであり、魔力が乱れに乱れ、修復できなくなればそれは死を意味する。


「魔力系の回復は複雑だから……起きるのはどれくらいかな?」


 担架に乗せられ医療室へと運ばれていく葛葉を眺めながら、葉加瀬はまたポツリと呟くのだった。




 ムクリと起き上がり、脇腹と鎖骨部のナイフを引き抜き投げ捨てる。血が吹き出し辺りが鮮血で染まるが、そんなのは些細なことだと、緋月は虚空庫から『万能薬(エリクサー)』を取り出し頭からかぶった。


「ふはぁ〜……いつつ。かな〜り重傷だってのに〜、どうして誰も来ないのさ!」


 閑散とした闘技場を見回して緋月は叫んだ。観衆の数も疎かになり、緋月の下に駆けつけるギルド職員すら居なかった。

 ミジンコくらいの威厳はあるはずと思っていたが、ミジンコ以下の威厳しかなかったらしい。


「も〜こうなったら……葛っちゃんに構ってもらうもんね!」


 起き上がり肩を回しながら緋月は葛葉のことを思い浮かべた。

 構ってもらうといっても、葛葉の身体的精神的回復が済んでからだ。その間に、緋月はやらなければいけないことがある。

 それは……。


「次期英雄候補の冒険者鬼代葛葉の極東派遣……か。やだな〜あの子にそんな事を頼むしかないってのはさ〜」


 極東派遣、実質邪竜討伐だ。

 まだLv.3になったばかりの葛葉を送ることは、死にに行けと言うのと同義だったのだが。

 葛葉は今日の特訓で勝ってしまった、大勢の人間に見られたのだ。

 かの【戦帝】に勝ったのを。

 故に葛葉は死にに行くのではない。戦いそして、邪竜を討伐しなくてはならないのだ。


「でも僕がぐちぐち言っても仕方ないよね。あの子ならって……! そう信じなくちゃ」


 パンパンと両頬を(はた)き、緋月は気持ちを入れ替えた。


「葛っちゃんはすごい子なんだから! ボクの、自慢で自慢過ぎる、大好きな弟子なんだからね!」


 不安そうな顔だったが、今の緋月にはそのような翳りはなかった。

 今はただ、親バカのような笑みで葛葉を思い浮かべていた。


「大好きだよ、葛っちゃん‼︎」


 本当に誰もいなくなった闘技場のど真ん中で、緋月は大きな声で愛を叫ぶのだった―――。

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