二十話 複合魔法
遅くなりました、すみません!
荒れ狂っていた雷が消え、煙が視界を埋め尽くしていた。滞空している緋月は眼下を見つめ、葛葉の姿を探した。
「……」
煙が蠢くことすらせずに、ただ静寂が全体を包んでいた。
もしかしたら殺ってしまったのかと一抹の心配がやってきたが、その心配は数秒後に無駄に終わった。
煙が蠢き、バッと一部分が晴れ、中から葛葉が飛び出してきた。
「―――ッ!」
冠を載せ、燦々と煌めくマントを靡かせ、長剣を手に持ち飛び掛かってくるその姿に、緋月は息を呑んだ。
首に剣の刃が届きそうになったが、緋月が目にも止まらない速さで交わし、剣を折るために殴りを放ったことで、長剣の刃が砕かれた。
「うッ!」
踵落としが肩に炸裂し、地面に落ちた葛葉は過呼吸になりながらも、立ち上がろうとした。
が追撃がやってくる。
ダダダと何本かの剣が先程まで葛葉がいた地面を貫いた。
「……はぁ、はぁ」
「強くなったね、本当に」
地面に降りてきた緋月が葛葉に優しくそう呟いてきた。
辛そうに表情を歪める葛葉は、緋月の唐突なその行為にポカンと思考停止してしまった。
緋月の奇行など今に始まったものではないのにだ。
「……ん、その感じ。まだ何か隠してんね〜?」
ハタと、葛葉を見る目を変えた緋月がニシシと笑みを浮かべた。
そして手をクイクイとし、掛かってこいとまたしても挑発してきた。
「本気だそ?」
さらには可愛く、キュルルンと、擬音がしてきそうな顔でそう小首を傾げる緋月。
そんな緋月に葛葉は笑みを浮かべた。
「『たれそかれ。……悔恨、絶望、失望……遍く想いを受け止め、唱うのみ』」
立ち上がり緋月を見据える。
「嗚呼、愚かな願いを叶えんとする英雄に救いの手を」
葛葉の影から闇が溢れ出す。
「沈む日、夕焼け空が目を焼いた」
小さかった冠が、淡い赤色だったマントが、闇に呑まれていく。
「滅びの祝詞、散った理想。嗚呼、散華のように」
『創造』を行使する。
現在葛葉が創り出すことのできるものは両手でも片手でも持てる小型の物のみ。
その制約を破り、限界を越える。
創り出すは頓珍漢な銃である、『想像』が無ければ扱えない代物。
「死を持って背負うは、遍く罪禍。嗚呼、かわ……たれ? ―――『紅焔凱―黄昏―』」
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をぜひお願いします‼︎