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十三話 未来で待つ敵

これは八日の分!

身体の節々が痛み、頭にはズキズキとした痛みがある。そんな状態に葛葉は少々眉間に皺を寄せている。

葛葉がもらった毒は麻痺の毒であり、死ぬ可能性は最も低いが致死量を超えれば簡単に死ぬ。そして葛葉は致死量よりちょっと少なめな量をもらってしまったがために、気を失ってしまったのだ。

後遺症というか麻痺の効果がまだ抜けていなく、身体はあまり自由に動かせない。


「あぁー今日は本当にしくった……それに!」


バサッ! と葛葉が掛け布団を引っぺがすと、スヤスヤと包帯の上から葛葉の肌をスリスリと頬擦りをしながら、気持ち良さそうに寝ている緋月が居た。

手はきちんと葛葉の双丘を揉み揉みと握りながら。

そんな緋月に、葛葉はもう慣れたという顔付きで緋月のアホ毛を稲を掴むように掴み、思いっ切り引っこ抜こうと引っ張った。


「ぬぅおおおおおおおおお⁉︎ く、葛っちゃん!? 痛い痛い痛い痛い痛い‼︎」

「……ふぁ〜眠いなぁ」

「葛っちゃ〜ん⁉︎」


陽が沈む夕方に、緋月の悲鳴は天高く木霊した。




「はぁ」

「やっと気が休めるね……」

「全くだよ。あの娘に情報が届かないようにするのは苦労するよ」


ソファに大の字で寝っ転がるように座る緋月。そんな緋月を労うのは葉加瀬だ。カタカタと目線も手もノーパソに向いている。


「あの娘が聞いたらすっ飛んで行きそうだからね」


緋月がテーブルに置かれた新聞紙の一面に目を向ける。


「『極東邪竜復活。都市に向かって進行、被害甚大。死者多数、ギルドの作戦失敗。極東ギルド職員五名死亡。派遣職員四名死亡、民間人の死者も多し』か」

「……大々的に載せられているね。まぁ、事実なんだけど」

「ボクのところの職員もやられちゃったしなぁ」


緋月の送った派遣職員は十五名。他のところのギルドも派遣させていたため、緋月と他のギルドの職員が犠牲となったのだ。

派遣職員の家族や親族にこのことを伝えるため、緋月自ら彼らの家に回り、彼らの家族や親族へ今後の生活を保証する旨も伝えた。なのだが、緋月の胸には穴が空いていた。埋められない穴が。


「緋月……あなたは優しすぎる。人を死なさせたくないという思いが悪だとは言わない。ただ、そんな顔はしない方がいい」

「……ごめん」

「あなたが選んだ道でしょ? あなたのその身体――不老不死の体は否が応でも人の死を何度も見る。寿命無き者が、寿命有る者を残してはいけない――」

「それでもボクは!」


葉加瀬の緋月を責めるような言い方の言葉の羅列が、心傷の緋月をさらに抉り挫く。

無慈悲と思われるかもしれない、酷い奴だと罵られるかもしれない。だが、葉加瀬にはそう言われる覚悟は決まっている。

緋月が決断したあの時から。


「だから、私はやめておけと忠告した。死者蘇生の術は危険だと……成功例は無い、可能性も無かった。なのに、緋月は……」

「……ごめん。葉加瀬」


次第に震え声になり、目線も手もノーパソから離れ緋月の方だけを見る。葉加瀬は涙で霞む視界に、懐かしき記憶を蘇らせる。

楽しかったあの日々を……。

そんな葉加瀬を緋月は優しく抱く。いつものように邪な事は考えず、ただ単に泣いている当時の仲間に寄り添うために。


「……あの日も邪竜が復活して、それを討伐に行った時だったかな」

「私は、あの娘を、葛葉ちゃんを邪竜討伐には行かせたく無い」

「ボクもだよ……いや、全世界の人がそう思うかな? 前英雄は、邪竜の手で殺されたんだから」


五年前、突如として復活した邪竜。【スターゲイザー】名前の由来は、石像から復活するまで、ずっとずっと夜空を、永久で不滅の生の中で空にある星を見上げていたからだ。

今回復活した邪竜とは全くの別物。邪竜の中で二番目に強い邪竜だ。前英雄は歯が立たなかった訳では無い。噛み付いた歯を、意思を、威勢を、ねじ伏せるように破壊されたのだから――。

読んでいただき、ありがとうございます!

はい、前書き通り八日の分です。夜に今日の分を投稿したいと思います!

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