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九話 吹っ切れて

遅くなりました!

 ガチャッと玄関扉を開けて屋敷に帰った。

 玄関に入って、さっそく靴を脱ごうとした時だった。


「あ、葛葉さん。お帰りなさい!」


 二階から降りてきた律と鉢合わせた。

 まだ若干オドオドとしており、接しづらそうにしていた。

 だが葛葉は乱暴に靴を脱ぎ捨てて、律の下に近寄りそしてギュッと抱き締めた。


「へッ⁉︎」


 ボッと一瞬にして律の顔は林檎のように真っ赤になってしまった。


「……律」

「は、はい⁉︎ く、くくく葛葉さんっ⁉︎ どどうしたんですか⁉︎」


 驚き過ぎてまともに話せない状態の律を、さらに強く優しく抱きしめる。


「……ごめんね」

「っ。葛葉さん……」


 抱き締め律の耳元で謝罪した。

 一昨日や昨日、今日の朝のことを謝ったのだ。


「……よかったです。やっと、やっと葛葉さんは……!」


 律の頬に涙が一雫流れた。

 今日まで見てきていた葛葉は辛そうであり、苦しそうであった。そんな葛葉を見ていられなかった律は、やっと吹っ切れた葛葉に喜びのあまり涙が溢れてしまったのだ。


「心配させてごめんね」

「いえ! 私は葛葉さんのパーティーメンバーですから! 心配するのは当然です!」


 抱擁を解いた葛葉は改めて律に謝罪すると、律はその大きな胸を張って当然だと言い張った。


 そして「一蓮托生のパーティーなんですから」と続けて言った。


「ぬぅ……して話は終わったかのう?」

『っ⁉︎』


 そんなほのぼのとした雰囲気になっていた二人の間に挟まっていた鬼丸が声を駆けた。

 目はジーッとして顔は膨れっ面の状態で。


「い、いつからそこに?」

「……うぬが律に抱きついたところからじゃ」


 とほぼ最初から見ていたことを明かした。

 恥ずかしいものは恥ずかしいが、その前に鬼丸の機嫌を直さなくては、後々メチャクチャな我儘を聞かされるハメになってしまう。

 と二人がその結論に至るまで一秒も掛からなかった。思考を一つにした二人が目配せし、必死に鬼丸の機嫌をと思った時だった。


「吹っ切れたのじゃな」

「…………うん、そう」

「活き活きとしておるのう。その瞳がワシは大好きじゃ」


 葛葉の瞳には、鬼丸が言ったように活力が溢れていた。

 そんな葛葉を一瞥してから鬼丸は言葉を続けた。


「自分の成すべきことを再認識できたのじゃな。……次迷うことがあればワシはぶん殴るのじゃ」


 衝撃の発言だとか、予想外の発言だとか、そう言ったことではない。葛葉はそうされて仕方ないことをしていたのだから。

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