六話 嫌よ嫌よも好きの内?
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戦いの終わりは着々と迫ってきていた。
緋月は単調な作業をしているかのように攻撃を避け、攻撃を行う。
対して葛葉はギッと奥歯を噛み締め、刀を握る手の力を込めた。
だが緋月は葛葉の攻撃後の隙をついて、特訓を終わらせた。ドサッと葛葉が尻餅をつき、表情を歪める。そんな葛葉へ近づき、緋月は、
「葛っちゃん、更衣室に来てくれる?」
「え……? っ、はい」
葛葉やその他三人に気付かれない様に平然を装い、葛葉を更衣室に呼び出すのだった―――。
―――後ろ手で扉を閉め緋月の背中を見つめた。
「葛っちゃん」
「は、はい」
いつもの様な、昨日の様な緋月の声ではなく、たまに出る真面目な緋月の声にビクッと肩が跳ね上がった。
ずっと背中を向けてくる緋月に不安がどんどん積もっていった。
「今日の特訓、どうだったかな」
「……すごく勉強になりました」
背中越しに聞いてくる緋月に疑問符を浮かべるが、構わずに応えた。
「りっちゃんと五十鈴ちゃんとはどう? ちゃんと労ってる?」
緋月がそれを聞くとかなりの間を開けて、また尋ねてきた。
その緋月の発言に葛葉は言葉を詰まらせた。
律と五十鈴とはさほど話してはいない。話したとて長続きしないのだ。原因はわからない、と言い訳を自分に言い聞かせて。
「…………はい」
そう返事を返した瞬間、パシン! と頰を叩かれた。
ジンジンと痛みがある頰を指で触り、何が起こったのか理解の追いつかない脳で理解しようとした。
そして何が起こったのか、すぐに分かった。緋月がビンタしたのだ、葛葉の頰に。
涙を目端に溜め怒りを爆発させずに、拳を強く握る緋月が目の前に居た。
「…………ぇ」
「君は……気付いてないフリをしてることを、自分でも分かってるだろう?」
「……」
律と五十鈴と距離を置こうと、大切にしない様にとしていたのは無自覚ではなく、ちゃんと自覚があった上でだった。
もう二度と失いたくないという葛葉の心の弱さがそうさせた。
「君はずっと嘘を付いてる……! 君は! そんな表情で笑う子じゃなかった……。君の、今までの笑顔は、そんなに辛そうには見えなかった‼︎」
今日一日で浮かべていた作り笑いに、緋月は気が付いていたのだ。
唇を噛み締め葛葉は拳を握りしめた。
見抜かれていた、特訓がなんの意味もなしないことも。それでも緋月は葛葉に教えてくれてた。
今、自分は、【英雄】は、鬼代葛葉は、何をしている?
「……なにも言ってくれないんだね。今日の特訓には何の意味はなかった、いや、ずっと前からかな……。明日の君との特訓で、本当の君と戦えると、ボクは」
以前として葛葉に背を向けたまま。緋月は葛葉の横を通って扉に手を掛けた。
そして間を開けてからゆっくりと、
「信じてる」
葛葉に向けてそう言った。
「……」
取り残された葛葉は静寂に包まれた部屋の中で、浅く息を吐いた。
まだ無くならない頰の痛みに手を添える。この痛みを想像で治すことはしない、というよりしたくないのだ。
情けない自分は、ビンタされたとしても指針を見つけることができない。痛みを感じて、自分は一生懸命やるぞという言い訳をしようと、しか考えられないのだ。
何がいけなかったのか、何をすればいいのか、何が何をどうすればいいのか。
「わか、らない……。―――っ!」
単純な答えすら思いつかずに、葛葉は部屋を飛び出した。
「―――んぁあああああああああああ‼︎」
頭を抱え転げ回る緋月に巻き込まれないように、葉加瀬が椅子に座った。そしてその隣では、緋月のランダムな動きに律が逃げ惑っていた。
「よぉやったのじゃ〜」
「頑張ったみたいだね」
緋月のそのみっともない姿を見て、ゲラゲラと笑っていた鬼丸が励まし、コーヒーを啜る葉加瀬も同様に励ました。
だが緋月にはそんな声は一ミリたりとも伝わってはいなかった。
「嫌われたぁ! 嫌われたよぉ‼︎ 絶対絶対、ぜ〜ったいに‼︎」
緋月がバダバタと陸に上げられた魚のように暴れ始めると泣き喚き出してしまった。
もう手出しできぬ状況に葉加瀬が嘆息し、鬼丸は更に腹を抱えて笑い出した。
「で、なんで私なんですかぁ⁉︎」
ついに捕まり巻き込まれてしまった律が、暴れ狂う緋月に身体を貪られる。
律の豊満な胸が餌食となった。
「あ〜……うぅぅぅぅ、嫌いにならいでぇ葛っちゃぁん‼︎」
と緋月は何処かににいるであろう葛葉へ思いを叫ぶのだった。
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