三十三話 戦いの終わりは近く
遅れました!
『……リリアルも居たのか。分かった、緋月はリリアルのことを抑えて置かないとか、私は……どうにかする』
「へぇ、葉加瀬らしくないねー? ま、ボクも早めに終わらせるよ」
担いでいた大剣を下ろし、緋月は念話魔法を切った。
葛葉が心配で心配で、今にも胸がはち切れそうな緋月はリリアルと真正面から戦おうとしていた。
「……今回は退くのだ」
「『は』ってw? あはは〜、『も』じゃないの〜?」
とリリアルの言葉の揚げ足を取る緋月に、リリアルの眉間に皺が寄った。
「あ、ほんとに退いた」
転移の魔法陣が地面に浮き上がり、攻撃かと身構えた。
が、この場に居る魔王軍兵士分のとリリアル自身のゲートを開いた。そして魔王軍は撤退していった。
「さて、葛っちゃんとこ行かないとっと!」
予想よりも早く終わらせることができたため、緋月は葛葉の気配がする森へ再び入っていった。
土煙が薄れていくとそこにはあの軍人、ヴィルトゥスが立っていた。
「ヴィルトゥス様⁉︎」
突如現れた上官に部下である三人が驚いた。
ヴィルトゥスが周囲を一周見回し、回復魔法を掛けているイコマに気がつくと、瀕死のカナデ諸共担ぎ上げた。
「ゔぃ、ヴィルトゥス様⁉︎」
「撤退だ! 行くぞ!」
状況が掴めていない三人に、そう告げ走り出そうとしたヴィルトゥスの耳を銃弾が撃ち抜いた。
「……」
「返せ」
しれっと攫おうとするヴィルトゥスに、葛葉は殺気だった目と声で、頭に狙いを定めた。
「ここに残せばこの娘は死ぬぞ」
「……」
葛葉へ振り返りヴィルトゥスは真剣な表情で伝えた。
葛葉達が回復魔法を使えぬのも、回復薬を使い果たしていることも知っているからだ。
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