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三十二話 理想

すみません、かなり遅れました!

「―――現実を見ろ! 英雄!」


 戦いの最中、ダルフが葛葉に向けて叫んだ。


「見たくないものは見ず、壊れちまった方が楽だろうよ! んでもよ! 認めてねぇんだろ、こんなこと!」


 戦いの最中にペチャクチャペチャクチャと、余裕がある証拠だ。だから葛葉は耳を傾けることもせずに、殺してやるのだ。


「さっきから流してんだろうが!」


 ピタッと足が止まってしまった。

 流れてる、何が、何が流れていると言うのか。この頰を伝っているのは返り血だ、誰がなんと言おうと返り血なのだ。


「もう何も失いたくないってんなら! 理想を叶えてぇんなら、見たくない現実は見なくちゃならねぇし……深い傷を負う覚悟も必要だ」

「……さい」

「楽な方に逃げてんじゃねぇ! それは、悲しいから流してるんじゃねぇだろ! 悔しいから流してるんだろが‼︎」


 頰を伝う涙が、じんわりと嫌な感覚を残して、地面に落ちた。

 『死を思え』(メメントモリ)の暴走など当の昔に解けていた。だが、こんなにも辛い現実は見たくない。聞きたくない。

 辛い思いも苦しい思いも、悲しい思いも。それら一切合切を味わいたくないのだ。


「うるさい!」

「……次はガキになる気か⁉︎ いい加減自覚しろ、テメェは【英雄】なんだよ!」


 押し付けられた無価値な称号だ、と言い返したくなったが。それを否定してしまっては終わりなことを、葛葉は知ってしまった。カナデの中の鬼代葛葉という存在が終わってしまう。

 鬼代葛葉という人間は英雄足り得ないのだ。誰もが思い描く理想にならないといけないのだ。

 そう決意した時から理解している。

 確かに暴走はした、だが今それは解けた。

 だから今の葛葉がすべきことは、


「あなたを倒す」


 空虚は理想で埋め尽くされ、全身の傷も治っていく。

 【英雄】として理想を理想のままには終わらせない。


「私は【英雄】鬼代葛葉。あなたを倒して、その子を助ける……理想を叶える」

「全く、面倒な女だな。……魔王軍幹部ヴィルトゥスの配下、【黒衣の魔剣士】ダルフ・アルバリオン」


 二人は名乗りを上げ、理想のために、仲間のために。両者は強い意思を胸に、戦い合おうとした。

 その時だった、地面が減り込み土煙が上がったのは―――。




「―――いや〜無理かな、でもなんでさ。行けるでしょ?」

『すまない、邪魔が入った。とりあえず第一陣は殲滅した、が数が多すぎる、葛葉ちゃんの下に着くのはかなり時間が掛かると思う。だから頼んでる』


 念話魔法で会話している相手は葉加瀬だった。

 後ろや前からは冒険者と魔王軍兵士たちがぶつかり合い、戦いあっていた。

 相手の兵士の数がかなり少なかったからか、冒険者の方が優勢だった。


「さっきも言っけど、無理かな〜。……ね、リリアル」


 緋月が念話魔法を話している間、殺気を抑えれていないリリアルが目の前にいた。

 ガルルと狂犬のように喉を唸らせるリリアルに、明るく緋月は相槌を求めるのだった。

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