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三十話 神官娘

名前的に…‥?

 二人の後ろでは自分の部下達が次々と倒されていっていた。


「チッ、命令に従わねーとか」


 後ろのルフを見やって、ダルフは悔しそうに舌打ちをした。今直ぐにでも部下を助けに行きたいが、それは下されている命令には関係のない行為。

 立派な命令違反だ。軍人たるもの、命令には従わないといけない。苦渋の決断の末、ダルフは【英雄】を部下に引き付けさせて撤退しようとした。

 グイッと服の裾を引っ張られるまでは。


「っ、なんだ?」

「早く治癒魔法をやらんとこの娘、死ぬぞ」


 全身の血が抜けたのかと錯覚しそうなほど白いカナデの身体を見て、ルフがダルフにそう訴えた。

 だがこの場に治癒魔法、回復魔法を使える者は居ない。呼ばなくてはならない。

 だがその者が倒されれば終わりだ。


「……んなつべこべ言ってられねぇか。……イコマ! 出番だ!」


 ダルフが唇を噛み締め、森全体に響くように声を上げた。

 数舜の静寂、そして背後の茂みが蠢いた。


「は、ははい!」


 すると茂みから人が出てきた。

 その人物は、純白の長髪と長い前髪、特徴的なアホ毛、神官の服装を着た少女だった。


「イコマ、この人間に回復魔法を掛けてくれ」

「は、はいぃ。……うぅ、怪我の具合が聞いてたのと違いますぅ!」


 泣き言を吐きつつもイコマと呼ばれた少女は、右手に持った錫杖(しゃくじょう)をカナデに向け、回復魔法の祝詞を(うた)う。


「……慈悲深き慈しみの神よ、尊き御身のお力を哀れなこの者へお与え下さい。主の御手は癒しの手なり『|主より慈悲と慈愛なる抱擁ロードマーシーアフェクション』」


 錫杖の先端が光だし、淡い光がカナデの身体を包んだ。傷口は勿論のこと、欠損した部位すらも再生の兆候が見えていた。

 律と五十鈴が驚き息を飲み、回復魔法を行使している彼女に向けていた武器を下ろした。


「……はぁ、まったく。なんで俺らがあんな野郎の尻拭いしねぇといけねぇんだか」


 武器を下ろした二人に警戒を緩め、ダルフは頭を掻きながら悪態をついた。


「イコマ、あとどんくらいだ」

「……」

「イコマ?」


 回復魔法を掛けている少女に、治療完了までに掛かる時間を聞いたが、ダンマリでしか返ってこず、ダルフは怪訝そうに眉を寄せイコマを見てみると。

 カタカタと手を震わせ、目を見開き固まっていた。だがそれでも回復魔法は使い続けていた。


「だ、だだ、ダルフさん! すっごく殺意を感じるんですけど!」


 と震える手で人差し指をある方向へ向けたイコマ。

 ダルフが人差し指の先に視線を向けると、そこには血塗れで、目を血走らせ最後の一人の喉を掻っ切った葛葉が、こちらを睨んできていた。


「お、おい……まさかこっちにくるわけじゃねぇだろな⁉︎」


 ゆっくりと身体を向けてきた葛葉に、ダルフが律達二人に叫んだ。

読んで頂きありがとうございます‼︎

回復魔法の技名のルビなのですが、『主より慈悲と慈愛の抱擁』の主から最後までとなります!

面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をお願いします‼︎

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