二十四話 安堵
少し早いですが!
「何が起きた⁉︎」
「……ぁ、そこは……まさか」
「ケヒヒ、キヒヒ、残念だったな英雄。お前の大切な仲間も後輩も……爆発に巻き込まれたぞぉ〜?」
動けないと思っていたアニムスの身体が動きだした。身体の構造がぐちゃぐちゃになる程殴られたというのに、まだ立ち上がったのだ。
だがそれには驚かずに葛葉はアニムスの放った言葉に、理解が追いつかなかった。
キノコ雲が出来上がるほどの爆発、ならば至近距離で喰らえば塵すら残らない……そしてアニムスの言葉。
そして理解が追いついてしまい、葛葉は自分の中の何かが切れる音を聞いた。
「……ふざ、けるな」
『死を思え』が本来の力を取り戻す。
邪悪な空気が更に立ち込め始めたのだ。そしてヴィルトゥスでさえ鳥肌が立った。それほどまで深い深い憎悪と殺意。
メメントモリの詳しい能力を知らぬヴィルトゥスだったが、見ていて分かってしまう。このスキルで人を、目的を達成してしまっては、この娘が死ぬと。
(殺すのが目的だったはずだ……! だから何も干渉せず目的が達せれるのを見るだけでいいだろう……)
アニムスはもうこれ以上は動けないだろう、事実立ち上がったことで気力の全てを使ったのか、一歩も動いていなかった。
「我は我の為すべきことを……するのみ」
魔王の命令は殺すな、あの映像で見たあの怪我。どう考えても死んでいるだろうが、冒険者は意外とタフなのだ、あの後すぐに回復薬や治癒魔法をかけられているならまだ一命を取り留めれる。
部下の一人に回復魔法の使い手がいる。その者に回復させ死なせぬようにする、それが今、ヴィルトゥスが為すべきことなのだ。
早く行こうと走り出した時、森の奥の奥、あの仮設テントの方向から雄叫びが聞こえてきた。かなりの数の。
「まさか、もう着いたのか。クッ、早く行かなくては」
その雄叫びを上げたのは残っていたヴィルトゥスの戦力だ。部下のことが心配で早く行こうと、更に一歩足を出し走り出した。
視界の外で金属が弾け合う音が鳴り響く。「やめろ」と言う人間たちの断末魔の声が聞こえてきた。
「―――全く、世話の掛かるなぁ。ボクの大大大好きな子は!」
ドゴン‼︎ と断末魔が途切れる直前に大地の断割する轟音が森全体に行き渡った。
その前に聞こえた声にヴィルトゥスが振り向くと、首だけになったアニムスが髪の毛を掴まれていた。身体は完全になくなっていて、英雄の姿も消えていた。
「少し、眠ってて貰おうか。……で、君は何なんだい?」
威圧感を出す小さな小娘に、ヴィルトゥスは身動き一つ出来なかった。
肩に大剣を担ぎ、土煙の中からギロリと見て来るのはかの街、オリアギルド支部長八重樫緋月だ。魔王軍幹部―――否、魔王直々に相手にするなと、お達しされるほどの要注意人物だ。
「あぁ魔王軍の連中ってことは知ってるよ……一応聞くけど君はボクと戦う気かな?」
公表されているレベルは9のはずなのだが、その身に隠しているであろう実力は底が知れない。
だが無謀とわかっていてもヴィルトゥスは、自分の力が目の前の強大な敵に通用するのか興味が湧いてしまった。
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