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十九話 狂気で戦う

 無闇な数撃ちゃ当たる戦法に当たる葛葉ではない、直ぐに想像で鋼鉄の壁を造り上げその後ろに身を隠した。ふぅと一息付いた時だった。

 ドチャッと液体めいたものが飛び散る音を聞いたのは。ビリッと痛みがある場所を見ると、脇腹が抉れていた。

 威力が上がったのかと思ったが、それ以前にどうやって鋼鉄の壁の向こう側の葛葉に飛んできたのか。その問いの答えは既に目の前にあった。


「……嘘」


 空には軌道を変えて葛葉の下にやって来る石の弾丸があった。その数は青空が覆い隠されるほど。

 流石の葛葉もここまで来れば焦りが生まれる。一発だけで脇腹を抉る弾丸が、空を覆い隠すほどの量となって降って来るのだ。

 鋼鉄の壁を造り上げるには『創造』の制限がかかってしまう。あの頭痛を受けながら戦うには、相手が強すぎだ。

 だからここは『想像』を頼るしかない。


「お願い……もって」


 葛葉が目を瞑り飛んでくる弾に生身を晒した。勿論そんな事をすればただでは済まない。

 弾に意思などなく、葛葉を肉塊にするだろう。だが葛葉の持つ『想像』の力ははっきり言ってチート級だ。頭と心臓を潰されない限り『想像』での全快ができるのだ。

 ただ痛みは消えないため、正気を保てるかまでは分からないが。

 だが分からないからやらないじゃない、分からないからやってみるのだ。


「―――うッ‼︎」


 最初に到達した一発が葛葉の胸へ、肺に大きな風穴を開けてみせた。ほぼ致命傷、だが葛葉はまだ全快させない。あと何発か受けてから使うのだ。

 『想像』も使えば疲れる、だから大怪我した時にしか使わないのだ。


「うっ、あっ! グッ、アガッ、ぃ!」


 石の弾丸が葛葉の身体を次々と貫いていく。

 内臓がどんどん駄目になっていくのを葛葉は、ただ感じるだけ。意識が飛ぶ寸前まで『想像』は行使しない。

 目を失っても、肩の肉と骨が散り腕が落ちても、首が一枚の皮で繋がっていようとも、全快はまだだ。

 そして両肩が抉り散った時、『想像』を発動させた。石の弾丸が一ミリ動いたと同時に、葛葉の身体は傷一つなく、元の姿になっていた。

 だがまだ石の弾丸は残っている。葛葉は同じ要領で『想像』を使うのだった。


「―――はぁ……はぁ……ケヒヒ、終わったな」


 アニムスは鋼鉄の壁の向こうから広がる血と、石の弾丸が降りやんだのを見て勝利したと思った。だが次に現れたあの少女を見て絶句した。

 鋼鉄の壁の向こうから葛葉がやってくる、土煙の中こちらに歩いて来る影を視認でき追撃をしようと頭はそう考えているが、身体は動かなかった。


「ば、馬鹿な……ッ‼︎」


 それは葛葉の身体が全快してない状態のを見たからだ。

 十億年に一人の美少女という言葉が似合っていた姿形はなく、顔はズタボロ。ゾンビの方がまだ黒くないと思わせる亡者の姿だったのだ。歩いて来る途中で全快し、元の姿に戻ったが。

 あの姿を見て驚かないものをは居ないだろう。


「……くっ、化け物はお前だ‼︎」

「っ!」


 化け物と自分をそう呼んだ、だが真の化け物はアイツだったのだ。

 再び二人の肉弾戦が繰り広げられる。斬っては斬られ、肉が削がれては飛び散り、血が両者を彩っていく。

 狂気の沙汰としか形容し得ない戦闘だった。

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