十七話 信じる心
遅くなりました!
「……まさか⁉︎」
無視しようとしたが、駆けてくるカナデの姿を見て咄嗟に石ころを見やった。
位置を変えるスキル。その対象がどれほど小さくても、大きくても出来るのだとしたら、今目の前にある小指なみの石でもでいけるのでは。
アニムスが初めて焦り剣を構え、入れ替えしてきた直後斬り倒せるように身構えたが発動することはなかった。
「石を囮に捨て身で掛かってくるか」
「―――フッ」
切先を石ころから、駆けて来るカナデへ向けた。
先ほどのように斬り刻む、次は立てなくなるまで。不適な笑みを浮かべ待っていると、カナデの姿が消えた。
「ぐっ―――」
索敵に移ろうとした瞬間、背中を斬りつけられた。
「どこ見てるんですか」
「ケヒヒ、いいな〜その能力!」
ますますやる気が出てきてしまったアニムスは、澄ました顔で見下してきたカナデに襲い掛かった。
上からの思い一撃を短刀の腹で受け流す。流した後のカウンターをスキルを使い避け、スキル後の位置予測の攻撃も甘んじて受け入れる。
身体中に裂傷が次々と、腹に腕に腿に打撲痕が次々と。今のカナデは見るに堪えない姿となっていた。
(このままじゃ……!)
大振りの一撃を回避したカナデは、周りを見渡した。
だがその見渡した光景はカナデの戦意を崩すのに最も有効的だった。
「ケヒ! やっと気付いたんですか、バカですね〜」
そんなアニムスの煽りさえ耳に届かない。届くのは衛兵や乗せられなかった方の避難民たちの悲鳴だ。
もう既に避難民たちに死者が出てしまっている。衛兵たちもほぼ壊滅状態に近い。なぜまだ保てているのかというと、
「お、おい! あんた!」
「私は良いので……! 早く回復して戦って下さい!」
殺られそうになった衛兵を大盾で守り、戦力をこれ以上削がれないように痛みに堪える五十鈴と、
「ぐぁ!」
「私が埋めます!」
攻撃に倒れた衛兵の戦力を補うオールランダーの律のおかげだった。
「強い部下を向かわせてる、直ぐにあいつらも死ぬよ」
「そうでしょうか……私にはそう思えません」
「ケヒヒ、根拠は?」
「……私が好きな英雄様の仲間ですから」
傷だらけの身体でも、再びカナデは起き上がった。
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