十四話 強大な敵
遂にですね
ガタンと車輪が石を踏み衝撃がやってくる。
比較的早い速度で移動中の馬車はかなり揺れていた、避難の準備が整い二台の馬車と一台の竜車が村を発ったのだ。
一番先頭を走る竜車の中で辺りの警戒を三人はしていた。警戒しつつ、敵襲の時の作戦も考えていた。
「じゃあ敵が来た時は冒険者を先頭にして、後衛はハイダに頼んだ」
「わかりました、先輩」
自分たちの役割をしっかりと理解して、戦闘に一切の懸念が残らないように立ち位置も分けていく。
避難している村民達に何かあれば、今戦っているかもしれない衛兵達、五十鈴達の士気に関わってしまうからだ。
———森の中を疾走し始めてから早三十分。
(このまま何も無ければ……)
淡い希望を抱き、葛葉は馬車で怯えている村民達を一瞥した。村民達は皆生気のないような表情だった。
「……」
気不味い静寂が訪れる。
暗い村民達を前にして、葛葉は励ましの言葉すら浮かばない。
そんな時だった、馬車が大きな揺れと共に静止した。
「……っ⁉︎」
「冒険者! 敵襲だ!」
駆けてくる音がして直ぐに馬車の窓が叩かれ、開けて見るとあの青年が焦った顔でそう言ってきたのだ。
その言葉に葛葉は馬車を飛び出した。あまりにも早い敵襲に。
「敵はどこに!?」
「一番先頭だ、ハイダが対峙してる」
「っ! 数は……?」
葛葉は青年の放った『対峙』という言葉が引っ掛かった。
「二人だ」
「それって……」
走りながら会話していた葛葉は、その報告に嫌な想像をし、嫌な思い出を思い起こした。
かなり前に対峙したあの少女のことを。
思い出したことをどうにか払拭し、葛葉と青年は走ってハイダの下へ向かった。
「ハイダ、下がれ!」
「っ……」
抜き身の剣をカタカタと小刻みに震わせて、黒の外套を深く被った不気味な男と、軍服軍帽軍靴のあからさまに軍人な男二人とハイダは対峙していた。
葛葉もハイダと同じ位置に立つと、全身の鳥肌が立ち奥歯が自然とガタガタと震え始めた。
「ヤバいぞ二人」
「わかってます、先輩」
剣を抜きハイダ同様震えている青年。
葛葉はそん二人に声は掛けず『創造』を使いナイフを造った。
「……キヒヒ。お揃いですかねぇ?」
外套の男が不気味な笑みを浮かべながら尋ねてくる。が葛葉達は返事をせずに警戒心を露わにした。
「まぁ分かってはいると思うんですが……。我々は『魔王軍幹部』な身でしてね、一応名乗りを上げなくてはいけないんですよぉ、これから死ぬって人にもね」
外套の男がキッと鋭い視線をハイダに向けた瞬間、地面から膨大な魔力が膨れ上がった。
葛葉が地面を見てみるとボコっと隆起していた。ハイダも青年も無論気付いているが、二人は足が動かなかった。
「―――っ‼︎」
地面から勢いよく飛び出してきた鋭利な土の塊は、葛葉の腹部を貫きグシャァっと生々しい音を立てた。
血が腹部から、口からも出血し地面に大量にぶち撒かれた。
「あ、お、おい⁉︎」
青年が叫び掛け出すと同時に、再び地面から魔力が膨れ上がった。
青年が魔力に気が付くとピタッと石のように動きを止めて魔法の行使をやめさせた。
「そうです、そうです。動いちゃいけませんよ?」
また不気味な笑みを浮かべる外套の男。
いつでも発動させられるよう魔法陣を構えながら、強気の姿勢で笑うのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
今回の四部出てくる魔王軍幹部は、第一部出たリリアルよりも全然弱いです!
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