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十三話 覚悟を決めて

 葛葉の――現代兵器の殺戮劇が終わりあらかた敵を片付け終わった。増援も来る気配がないため、一度仮設テントへ集合することとなった。


「戦況は」

「は、はい! 前線の後退は確認されておりません。冒険者一人だけで持ち堪えております!」

「……そ、そうか」


 衛兵長が報告しに来た衛兵の言葉を聞いて少しだが驚いていた。それを聞いていた葛葉はすぐに、その持ち堪えているであろう人物に察しがついてしまった。

 余りの強さに衛兵長は引いてしまったのだろう。


「じゃあ人の避難は無事に行えるかと……」

「うむ。分かった、ならば今すぐ始めるぞ!」

『はっ!」』

「……ですが気にかかることが」

「なんだ」


 鬼丸のおかげで増援が到着しない今が、村民たちを避難させる絶好のチャンスであり、直ぐにでも実行させる号令が掛かるかとかと思ったその時だった。

 衛兵の一人が挙手し衛兵長へと歩み寄ったのだ。


「村民たちに護衛は付けるのですか?」


 衛兵長に向かってそう尋ねた。

 村民たちを逃すのはいいが、もし狙いが村民達に向いたなら護衛がいなくては全滅してしまう。

 だが護衛をつけるほどの戦力の余裕はこの状況ではある訳がない。

 護衛をつけるかつけないか、衛兵長はその苦渋の決断を迫られ沈黙してしまった。


「――私がやります」


 そんな中葛葉が手を上げて衛兵長の前に立った。


「なっ……!」

「葛葉様⁉︎」


 衛兵長が驚き五十鈴が葛葉の手を取った。


「私と……あと二、三人を護衛に付けてください」


 葛葉の覚悟の決まった顔でそう言われた衛兵長は悩み顎に手を置いた。


「いいだろう。……貴殿の腕は確かだ、信頼できる。後は、ガルス、ハイダ頼めるか」

「え、俺⁉︎」


 ガルスと呼ばれ驚きの声を上げたのは先ほどまで一緒だった青年で、そしてもう一人は男だらけの衛兵達の中で唯一の女性だった。


「分かりました」

「すまないな、頼む」


 衛兵長のその言葉に文句一つ言わずに女性衛兵、ハイダが仮設テント内から出て行き、ガルスも渋々出て行った。

 その二人に続き葛葉も出て行こうとした時だった、ギュッと握られていた手が更に強く握られた。


「……っ」


 振り返ると物凄く不安そうな三人が目をうるうるとさせ見つめてきて居た。


「……大丈だから。今度は、平気……だと思う」

「葛葉様のその言葉は信用出来ません……!」


 涙ぐみながら五十鈴がそう詰め寄ってくる。


「葛葉さ〜ん、絶対にがえっでぎでぐだざいぃぃぃぃ」


 律が五十鈴よりも涙ぐんで……というより泣きながら葛葉の身体をホールドしてきて、ズビビと葛葉の服で鼻を()む。

 そんな律の頭に手を置いて、「やめて〜」と空笑いを浮かべてしまう葛葉。

 そして葛葉の視界の真ん中で表情を暗くさせて居るもう一人、もちろんカナデだ。


「英雄様……」

「大丈夫だよ。……信じて」


 カナデは涙ぐんだりも泣いてたりもせず、ただただ不安そうな顔で葛葉を呼んだ。

 カナデのそんな顔を見て葛葉は帰ってこないと行けないと、決まっていた覚悟を更に決め込むのだった。


「じゃあそろそろ行くね。三人は出来る限りのことをして。そして絶対に無茶はしないで……‼︎」


 そう言い残して葛葉は仮設テントを、今度こそ後にするのだった。

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