九話 特訓開始!
投稿する時間が……
――翌日――
ギルドに備えられているサイゼみたいなとこで、黒と紺色の髪の少女が二人テーブル席に座っている。
「見て下さい! 無事出来ました!」
「おぉ〜、おめー」
律と葛葉が集まっている理由は、登録できたことの報告のためだ。
冒険者カードを頭の上で掲げる律はそれはもう嬉しそうにしている。
「ちょっと見せてもらって良い?」
「良いですよ!」
律は葛葉へ冒険者カードを手渡した。
葛葉が貰った冒険者カードを見てみると、なかなか良いステータスをしていた。
筋力、防御力、敏捷、耐久力、器用、全てにおいて平均よりちょっと高いくらいだ。これはLv.1の中級クラスだ。ステータスの次はスキル欄をチェックする。
スキルはそれと言って良い物があるとは言えないが、一つだけはある。
スキル『オールランダー』……スキル交換はあらゆる武器、技を扱えたり覚えることが可能。
かなり使えるスキルだ。
「ほぇ〜。律は得意な武器は?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました!」
律が待ってましたと言わんばかりの顔をし、腰に携えている刀に手を置きドヤっとする。
赤と白が基調の刀は異様な雰囲気を醸し出し、見る者全てを虜にするような感覚に陥る。というか……カッケェ。
葛葉の本音はそれだけだ。
「へぇ〜良し悪しは分かんないけど……良い刀なの?」
「はい! 私の先祖が代々大切に保管して来た家宝の刀なんです!」
……え、そんな刀を持ってて良いの?
これから冒険者になる、というか既になっている律にその刀を渡していては、紛失したり壊したりしそうだが? か、家宝なんだよね?
「だ、大丈夫なの?」
「え? ……あぁ! はい! 大丈夫ですよ!」
自身ありげに答える律だが、葛葉はへーと胡散臭い者を見る目で先を促す。
そんな葛葉の目に、律が不満ありありな目をするが借金抱えてた奴の言葉を誰が信じるというのか。
「この刀の凄い所はですね、錆びない、折れない、刃こぼれしない。となっています」
「強!」
何だその刀。魔法でも掛かってるのかと問いたくなる性能だが。冒険者になれば誰でも習得できる『魔力察知』には何も引っ掛かっておらず。
あの刀は正真正銘でその性能をしているという事だ。
「流石は家宝なだけはある」
「そうでしょう、そうでしょう!」
「律のじゃ無いだろうがな」
「ひ、酷いですよ!」
ふふーんと何故かドヤ顔の律に腹が立った葛葉は、律のでは無く多分先祖の刀である事を大分端折って言った。その言葉に律がガクシと項垂れる。
「――おーい! 葛っちゃーん‼︎」
二人が楽しく? 話に没頭していると遠くから葛葉呼ぶ声が聞こえて来た。
声の聞こえてきた方向、声の主がいるであろう方向に目を向けると、装備を着た緋月が手を振っていた。
「あ、そう言えば今日は特訓か……」
思い出したと握り拳を掌に叩く仕草をする葛葉。そんな葛葉を目にし、律はキョトンと何が何だかと言った表情を浮かべる。
その表情に気が付いた葛葉は、そういや話してなかったと律に向き直り話し掛けた。
「今日はここのギルドのギルド長と稽古みたいなのをする予定だったんだ、律はここで待ってても良いよ?」
「……稽古ですか? 見てみたいです!」
「そ、そう? まぁ良いけど」
何故かがっついてくる律に首を捻るが、まぁそんな事はどうでも良いやと割り切り、葛葉は緋月の下へ向かう。
着ていたジャージを脱ぎ、虚空庫へとしまう。そしてジャージを脱いだ葛葉には一斉に視線が集まった。特に男性の。
「やっぱりこうなるよね……」
当然その中には緋月と律も含まれている。律は純然たる驚きだろう。緋月と男どものは……知らん。てか言いたく無い。
葛葉含めて女性冒険者、数が少ない女性ギルド職員達が顔をしかめるが。ギルドの長があれなので、男性冒険者や職員は気付いていないだろう。
「はぁ、やっぱり懲りて無いなあの人」
葛葉は目の前で葛葉の姿を見てキラキラと目を輝かせる変態を恨めしそうに見やる。
あの程度ではダメなようだ。
葛葉はまた大きくため息を吐き、次はもっとヤバいことしようと決意した。そんなことは心のど真ん中に置いといて。
葛葉は着ている服に魔力を流し込む。一ヶ月前は戸惑ったが、今となっては咄嗟に防具を出せるようにまでなっていた。淡い光が身体中を覆い、数瞬して霧散する。
先程までのちょいエロな衣装とは打って変わって、戦闘向けに特化した防具へと早変わりした。ちょいエロではなくカッコいいの方が勝る。(相変わらず背中は丸出しだが)
「ぐへへ〜」
「緋月さん……」
「おっと! じゃ、始めるよ。とその前に」
「……?」
顔を蕩けさせ葛葉の姿で何かを想像していた、緋月に声を掛け現実へと引き戻させる。
緋月は現実に戻ってくると、垂れていた涎を拭い纏っていた雰囲気を変える。
「特訓だけど、これは本格的な特訓だよ。ま、使うのは木剣だけどね。制限時間はなし、葛っちゃんの勝利条件はボクに木剣を一回でもいいから当てること」
説明口調になり緋月は淡々と説明してくれる。こいう時はちゃんとするのに、何故日常的にちゃんと出来ないのか……不思議で仕方ない。
「葛っちゃん……分かってはいるだろうが」
「はい。あの戦い方はしません」
「…………それが聞けてよかったよ」
険しくなっていた緋月の顔が和らぎ、いつもの笑顔へと変わった。
そして、緋月と葛葉。両者位置に着いた。
いつ始まるかは聞かされていな――。
「じゃ、ちゃっちゃと始めようか」
と二人の顔を見て葉加瀬は呟いた。いつからそこに居たのか甚だ疑問だが、今は特訓へ意識を集中させる。
緋月は余裕を持って、葛葉は過度な緊張をしながら、葉加瀬は手を空に掲げ――同時にパン! という音が響いた。
「――ッ!」
開幕速攻仕掛けたのは葛葉だった。
読んでいただき、ありがとうございます!
また、毎日投稿が崩れる所だった。