三話 ここから始まる
読もうと思っていただき、ありがとうございます!
もうこれで四個目の投稿! もっともっと投稿して行きたいと思います‼︎
「し、師匠。俺よりもあの娘を……」
「ん? そこの君ー! 大丈夫ー?」
少女の声は聞こえてるが、葛葉に応える気力ももう無い。
「こりゃ早く済ませないとかな」
地面に突き立てた大剣を引き抜き、ゴブリン・レジェンドに向け構える。
『グゥ……何者ダ貴様ハ』
「んー、ギルド長だよ。……あ、モンスター行っても分からないか」
『舐メルナヨ小娘‼︎』
切断された両手を、瞬時に再生させ、少女に襲い掛かる。
「あーごめん。君、もう戦えないのよ」
瞬間、レジェンドの前身から血が噴き出し、切り傷が出来る。全て、致命傷だ。素人から見ても、きっとあれは死んだというはずの、傷が何箇所にも現れる。
『……ククク、先ノ一瞬デ既ニ勝敗ハ決シテイタト』
「ごめんねー、モンスターの中では滅多な『武人』さん。……君が、ここらの冒険者狩ってるって噂のモンスターなんだろう?」
先程までのおちゃらけた口調とは打って変わり。酷く冷たい声音、そして目を向ける。
『ハッ! ダカラドウシタ』
仰向けに倒れているレジェンドは、少女の氷よりも冷たい視線、声におじける事なく、笑らけて見せる。
「……へぇ〜、君、物凄く変わってるね。こんな状況でも楽しんでる」
『ハハハ、小娘ニコウマデ見透カサレテイヨウトハ。我ガ生涯ハ剣術ノタメニアル。剣ノタメニ生キ、剣デ死ネルノナラ悔イハナイ』
「そっか……なら、死んだらきっとある人物に会うから。その人に言えば、次はちゃんとした生を歩めるよ」
『ソウ……カ』
レジェンドは苦笑し、息絶えた。
「さて、ラグスーと君もまだ意識あるかーい?」
返事はない。
本来なら、こんな大怪我してる冒険者や迷い人がいた場合、回復薬のポーションを飲ませるのが定石なのだが、このポンコツギルド長は飲ませていない。
「……はぁ、はぁ、師匠! 重傷者らしき人がいたら直ぐにポーションを飲ませるか、掛けるかしてください‼︎」
痛みで息を荒くし、匍匐前進で葛葉の下まで来たラグスは、少女に声を荒げる。
「あっ! ごめん! ……そんなに怒んなくても〜。そんじゃ、早く帰ろっか!『テレポート‼︎』」
意識が朦朧とし、少女のその言葉を最後に聞き、葛葉の視界が真っ白に染まった。
「うわー、これは……ねー」
なんだ? 声が聞こえる。女の人の?
「足のなんか……してるし。腕だって……なっちゃってるよ〜」
俺はどうなったんだ? たしか、デッケェゴブリンに蹴り飛ばされた気が……。
「……んぅ、あぁ」
朦朧としていた意識が覚醒する。
「おっ! おはよう、転生者くん……ちゃん?」
霞む視界には、赤黒い色の髪をした少女。とその隣には目の下に隈がある女性。
「あの……ここは……?」
「ここはオリアギルド支部、の医務室だよ」
「ギルド……?」
まだ身体は痛むが、上体だけ起き上がらせる。
「そっ! 君はもう二日間は眠りっぱだったよ?」
「……二日も⁉︎」
「ゴブリン・レジェンドにやられた傷がね。結構致命傷になり得たんだ。腕の骨も、粉々になってるし、背骨も何箇所か罅が入っていたからね」
マジか……。前世で死んだ時よりも痛そうだな。
「あのゴブリンは……?」
「ボクが討伐したさ! むふふん、ボクを敬い崇めたまえ〜」
「それで、傷の具合はどうかな?」
無視されてる……。アニメでこう言う仕打ちのキャラって居るよなぁ。……大抵そういうキャラって偉い身分だよな……。
「あっと、まだ痛いです」
「そうか、まぁ無理もないか。とりあえずは安静にするようにね、完全に治療出来たわけではないから」
「……あの、いいですか?」
「ん? 何だい?」
葛葉は気になっていた事を女性に聞く。
「ここは異世界なんですよね?」
「あぁ、そうだけど?」
「なら魔法とかで回復出来るんじゃ?」
「……出来ないと言えば、嘘になる。ただね」
葛葉の疑問に女性は声のトーンを落とす。
「あまり推奨はできない。回復魔法ってのは、無理やり細胞を活性化させ、治癒力を高めるんだ。だが、そんな事を頻繁に行っていては、身体が本来の機能を全うしなくなる」
なるほど、つまるは駄目だってことか! と一人納得する。葛葉はイマイチ理解していなかった。
「簡単に説明するとだね、細胞が仕事しなくなる。うーんとね、ニートと同じだよ」
「うっ! な、なぜ!」
「……? 働かないでも、また身体の外からの謎の力でどうにかしてくれる、と細胞が認識してしまう。よって、回復魔法での治癒はあまり勧めれない。人間、自然に任せるものさ」
ニートという言葉のナイフに、一度は心臓を刺されるもなんとか受け止め、女性の話を最後まで聞いく葛葉。
(ニートじゃないもん、フリーターだもん!)
と、心の中で程度の知れた意地を張る。というか、フリーターですら無かった気がする……。
「だがまぁ、ポーション飲んでるし。あと二、三日すれば完治するさ。それまで安静にしてればだけど」
すると女性は、いつの間にか葛葉の座っているベッドに体重を預け、眠っている少女を叩き起こし、そのまま部屋を後にした。
「ひっでぇ扱い」
と、葛葉は思っていた事を言うのだった。そして、それから二日後
「やぁやぁ! 転生者ちゃん、おっはよ〜‼︎」
バン! と扉を強く開けるのは赤黒色の髪の少女だ。アホ毛がまるで意志を持っているように動き回る。
「お、おはようございます……」
「……あっ! そういや、名前言ってなかったね!」
「緋月さんですよね?」
少女が自分の名を口にしようとしたが、葛葉が先に名を言ってしまう。
「な、ななな何故、ボクの名前を!? ハッ! まさかエスパー!?」
人生楽しそーだなこの人。ジーッと遠くを見る様に、葛葉は緋月を見る。
「いえ、食事を持ってきてくれる人が教えてくれて……」
「くぅ〜スミノめ〜」
恨めしそうに何処かを睨む緋月。そんなに名乗るのが好きなのか……。
「まぁいいや。……ねぇ、冒険者になって見ない?」
さっきまでの雰囲気がガラリと変わり、鳥肌が立つ。謎の圧迫感、極度の緊張。本能が危険信号を発している。
「冒険者、ですか?」
汗が頬を伝い、滴り落ちる。
「そ! キミなら大歓迎だよぉ!」
また雰囲気が変わった。この間とついさっきの時のような、ふにゃふにゃした雰囲気に戻った。
「なってみたいです」
「そうと決まれば! 今直ぐこの申請書に―――!」
と緋月が懐から一枚の紙を取り出すと同時、スパン! という快音と共に、白衣を着た女性が緋月の頭を叩いた。
「アイタッ⁉︎」
「何もかもすっ飛ばしすぎ」
持っていたハリセンを放り投げ、緋月の持っていた紙を取る。
「申請書だけしゃ、正式に冒険者にはなれなからね」
「えー!? そうなのー!?」
「……いつも事務仕事を丸投げしてるから」
目頭を抑え、ため息を吐く女性。
「冒険者になるには色々段取りがあるから。とりあえずは、部屋を移動しようか」
葛葉はとある部屋に移動し、大きなソファに座り、ソワソワしていた。何故なら、今から冒険者になるのだから。異世界物のど定番、冒険者になる資格試験とかで、己の秘められたチートスキルや、チート能力が発現する!
そんな期待を胸に、葛葉は白衣の女性を待った。
「遅れてすまない……。私も書類が何処にあるかは、把握してなくて……」
「あ、いえ」
かなりの量の紙束を持った白衣の女性は、葛葉の正面に座り、持っていた紙束を机に置いた。
「さて……そういえば、私はまだ君に名乗って無かったね」
白衣の女性は一度咳払いし微笑む。
読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも良いなと思ってくれたら幸いです!
一応確認はしていますが、誤字脱字があったら遠慮せず言ってください!