十二話 念願が叶っただけですので
「―――ッ! はぁ……はぁ……数が多いです……‼︎」
何百本目かの矢を放ちきり律は腕に限界が来て居た。汗が滲み出し、辛そうな表情を浮かべ戦場を見渡した。
五十鈴は大盾で敵を薙ぎ倒していたり、ピンチに陥った他の衛兵を救ったりと大活躍して居た。
カナデは持ち前のスキルを駆使し次々と敵を倒して居た。カナデのスキルは"自身と相手の位置又は物と位置を変えれる"といったスキルなのだ。発動条件で手を叩いたりしないのでかなり強いのだ。
「……私も下に降りて戦いに行きませんと。ぇ、――ッ! あれっ……て」
矢ももう無くなってしまっており高所にいる意味がなくなってしまったため、腰に携えている刀の柄を握りつつ降りようとした時だった。
見覚えのある人物が視界の端に過ったのだ。
「あぁ生きて居て……」
「いたんですね」と最後まで言えず、律が涙を溜めながら感極まった顔でそう呟いたと同時に、鼓膜を殴ってくるかのような爆発音が戦場に鳴り響いた。
それと同時に魔王軍兵士の頭が破裂した。
「……っ」
「な、何が起こった⁉︎」
「なんだ……アイツ」
戦場全ての人々の目線が広場の一角に居る少女に集まり、一人を酷く殺したことに動揺が走った。
ナイフを左手に持ち、右手には銀色の何かを持った美少女。
「いや、アイツ……!」
「アイツだ! アイツが【英雄】だ‼︎」
魔王軍兵士たちが凝視していると英雄の正体に気が付き、持って帰るべき首を目にした兵士たちは目の色を変えて駆け出した。
「葛葉様!」
「英雄様っ‼︎」
葛葉に向かって駆け出していく兵士たちを食い止めつつ、葛葉に向かって声を上げる五十鈴とカナデは安堵する暇もなく、葛葉に幾つもの凶刃が迫った。
凶刃が葛葉の肉を断つ寸前に爆発音が鳴り響いた。
一番近くにいた兵士の頭が破裂し倒れた。後ろに続いていた兵士たちは硬直し、葛葉は倒れてくる死体を押し除けて飛びかかった。
「……こっちの方がいいや」
首にナイフを突き刺し掻っ切った後、銀色の物――S&W社製の大型リボルバーM500――を頬にすりすりしながらボソッと呟いた。狂気じみた目で。
「『想像』で反動は無くせるから……連射できる」
M500の威力は、誰もが知っているデザートイーグルの1〜2倍だ。50AEよりもM500の弾薬の方がパワーがあるのだ。
それを連射できるというチート。
「やっとTUeeeが出来る」
と迫り来る兵士たちへ高威力の弾を撃ち込みながら、念願の夢を叶えたことに葛葉は喜んだ。
だが葛葉の心中を理解していない者には一方的な殺戮に、頬を赤らめ興奮するヤバい奴としか映らなかった。
「く、葛葉さん……?」
「……葛葉様」
流石の二人も葛葉の姿に引いた。のだが、
「英雄様……可愛いっ!」
と葛葉よりも表情を蕩けさせ、ハート目のカナデが二人の隣で悶えた。
葛葉の行動よりもカナデの方に引き、二人は作り笑いを浮かべた。
読んで頂きありがとうございます‼︎
誰でも無反動でマグナム撃てたら興奮するでしょう?
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