八話 戦へと
少し書き方変えました。
「――――避難状況は!?」
「馬がほぼ殺されてんだ! 村の全員なんて無理だ‼︎」
「それよりも街からの応援は⁉︎」
「んなもん直ぐ来るわけねぇだろ‼︎」
衛兵達が怒鳴り合い対応に追われる。街への早馬は出してたとしても直ぐには来ない今、街からの冒険者の増援は望めないだろう。
それに未だ村民達も避難することが出来ないでいる。
「……」
そんな光景を唖然と眺めていると、一つ頭に思い浮かんでしまった。阿鼻叫喚とはこのことだろうかと。
昨日までは平和に暮らしていたはずだ、なのになぜ火の海の中で逃げ惑うことになったのか。
「カナデ」
「……」
背後から声をかけられるも、振り向く気力も、声を出す気力も残っていないカナデは、ただ黙ることしか出来ない。
「戦う前に、これを見るでない」
「……」
それでも構わないと声の主は話をし始めた。
「戦の前は大体このような感じじゃ」
声で誰か判別が付く。今、話しているのは鬼丸だ。
「戦争において民間人を殺すことは悪とされる。が、相手が敵国の民間人を殺さんわけがないじゃろう」
それは今を生きる人々が習う戦争の歴史だ。長きに渡る戦争の。
「こんな光景はの、日常茶飯事じゃった。じゃったが、うぬらにも慣れろとは言わんのじゃ」
「……」
「ただこれを見て思った、感じた、その感情を彼奴等にぶつけるのじゃ。それが出来ぬのなら見るのをやめるのじゃ」
何のフォローにもなって無い気がするが、だが戦っている最中に余計なことを考えずに済むのなら、良いのかもしれない。
気持ちを入れ替えねば、とそう思っていると……。
「来た、来たぞ‼︎ 敵襲だ、魔王軍の奴らが来たぞー‼︎」
見張り台で周囲を警戒していた衛兵の掛け声が聞こえてきたのだ。
そして次の瞬間見張り台が木っ端微塵に吹き飛ばされてしまった。
「……っ」
「始まってしまったようじゃな」
「……行きましょう」
「そうじゃな」
先制攻撃を受けザワつきだす衛兵達とは違って、鬼丸とカナデは肝が据わった表情で衛兵長のもとに向かうのだったーーー。
「……暑い」
近くの火が燃え盛り倒壊した家屋を眺めながら、葛葉は汗をダラダラと流しながら愚痴をこぼした。
葛葉の近くも当然木材が燃えている。
「密閉空間じゃ無いだけよかった……じゃなかったら今頃中毒死……」
先ほどから隙間風が常に吹いてくるので中毒死の問題はない。ただ何が燃えているのか確認も出来ていないため、必ず中毒死するかも定かではない。
けど死なないのなら問題はない。
「……っ?」
そんなこんな思っていると遠くから轟音が聞こえてきた。そしてすぐに鐘の音が聞こえてきたのだ。
「ん、用意しておこ」
万が一のために葛葉は『創造』を行使する。作り出すは適当な銃。近くを通る足音が聞こえてきたら、すぐに引き金を引いて居場所を知らせるのだ。
自分頭いい……とドヤァっとしているとすぐさま近くを走る足音が近づいて来たのだ。咄嗟に葛葉は引き金を引いた。
「……っ! 耳、痛い……‼︎」
耳に近いところで打ってしまったがためキーンと耳鳴りが起きてしまった。耳を抑え顰めっ面をしていると、
「おい! 今なんか聞こえたぞ!」
「人の声じゃなかったか⁉︎」
「不味いぞ! 下敷きなってるじゃないのか⁉︎」
と男性の慌てる声がかすかに聞こえて来た。耳から手を離し、目一杯の力で葛葉は家屋を上へ押した。
わずかに持ち上がる家屋。だが重すぎる。すぐに腕の力が抜けて家屋が落ちてきてしまい、砂埃が待ってしまう。だがそれが吉と出た。
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