六話 負け戦
今日から毎日投稿復活です!
鬼丸と五十鈴が話している時だった、横から急に声を掛けられた。
「む? なんじゃうぬは」
「あ、すいません! わ、私はこの村の衛兵なのですが……衛兵長からみなさんのお力添えを貰いにいけって言われましたので……」
「なるほどのう……で一体何が起きたのじゃ?」
衛兵と言うにはまだ幼過ぎる少年? が、鬼丸にオドオドしながら、自身のことと声を掛けた理由を話した。
場所を移し、鬼丸達はとある場所に来ていた。
「よくぞ来られた」
「うぬが衛兵長とやらかのう?」
「あぁ、そうだ」
仮設テントの中では衛兵長とその他の兵士が地図を囲みながら話し合いをしていた。
鬼丸が目の前の筋骨隆々なイケオジに物怖じせずそう問うた。
「……何が起きたのじゃ?」
「―――魔王軍からの攻撃だ」
鬼丸のさらなる問いに、衛兵長は一瞬の間も開けずにそう答えた。
鬼丸を含め五十鈴達は目を点にさせ驚いた。
「魔王軍じゃと⁉︎」
「あぁ」
鬼族の里ならまだ分かるが、ここはそれよりもさらに人間領の近くに位置する村だ、魔王軍が攻めてくる筈がないのだ。
他の衛兵は知ってるのかその言葉を聞いても至って平静だった。
「数は⁉︎」
「五千位上だそうだ」
「馬鹿な……、どいうことじゃ⁉︎」
あの鬼丸でさえ少々平静さを失うと言うのに、衛兵長は肝の座った顔だった。
「……どうするのじゃ、到底敵う相手ではないのじゃぞ?」
「はい、分かっています。ですが、我々は衛兵。この村を守るために居るのです。……街へ早馬を飛ばしました。増援が来るのは最低でも三時間後です」
彼我の戦力は圧倒的であり、街への増援は懸命な判断なのだが……。この村は街からかなり離れたところに位置するため、素早い増援も期待できない。
やはり敵う相手ではないのだ。
「こちらの戦力はどうじゃ……?」
「私がLv.3で部下達は皆Lv.2です。衛兵の数はざっと四十ほどです」
「……ふむ。やはり無理じゃろうて、必敗の負け戦で命を散らすわけには行かぬじゃろう」
どんなにレベルが高くとも数が多ければ意味がない。質より量というのは戦いにおいて一番効果的なのだから。
「冒険者殿の言う通りだが、我々はやはりこの村を守りたいのです。あなた方が嫌だと言うのなら、私に止める権利はありません。……どうかお逃げください」
衛兵長は鬼丸の否定的な意見へ次々と自分の意見をぶつけていく。
どんなに鬼丸が否定しようが、覚悟を決めた人物をちょっとやそっとで動かせるわけがないのだ。
「……鬼丸様」
「鬼丸さん……」
律と五十鈴が見てくる。今、葛葉が居ないこのパーティー内で決定権を有しているのは鬼丸だ。
ここで葛葉を助けるため負け戦に身を投じるか、それとも我が身可愛さで逃げるのか。鬼丸は二者択一を迫られている。
だが答えはきまりきっている。
「その戦い、儂らも参加するのじゃ」
葛葉が取り残されているのだ、どこの世界に愛しの妻を見捨てて逃げるような者が居るだろうか。
それに本来のリーダーならそうしたはずだから。
「ご助力感謝致します。早速ですが作戦をお話します」
鬼丸の決定に、律が準備万端ですと身体で表現し、五十鈴が盾を取り出すことで伝え、カナデが表情を引き締めることで示す。
異論は無し、皆同じ気持ちだ。
負け戦に身を投じるのでなく、負け戦に身を投じ、そして勝ち戦にするのだ。
「最後に笑うのは儂らじゃ――――」
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