二十二話 動く影
すいません! 機材トラブルです!
「―――一つ言っておくが、アイツは強い。手加減を知らねぇ狂犬と一緒だからな、油断したら手首まで噛みちぎってくるぞ」
と割って入って来たのは、葛葉に殺されたはずの男、ヴァーンであった。
魔王と幹部達の前でも臆さずに、堂々と声を上げるヴァーンに、幹部達が目を丸くしてしまった。
「はっ! 何言ってやがる、テメーは負けた言い訳がしてぇだけだろが!」
「幹部会議にテメーなんざ必要ねぇんだよ!」
ヴァーンが姿を現すや否や、直ぐに野次が飛んでくるこの始末。
手加減したとしてもLv.7がLv.2に負けたのだ。仕方ないだろう。
「黙れ三下、戦ってすらいねぇ奴に野次る権利はねぇんだよ馬鹿が」
野次を飛ばしてきた幹部を睨みつけ、ヴァーンは魔王の目の前まで歩いて行く。
「あんま刺激しねぇ方がいいぞ」
「……さ、サキュバスのお店は済んだのか?」
「あ、あー。済んだん済んだ、久々にスッキリしたわ」
魔族の王たる魔王に臆さず、セクハラ発言を平気な顔でしていくヴァーンへのヘイトは凄まじかった。(主に侍女と女幹部達だが)
だが魔王も満更では無さそうなので、殺すことが出来ない。そんな不穏な空気の中、ヴァーンは大きな欠伸をするのだった。
「それで、英雄を潰すって話だが。具体的には?」
ヴァーンが怠けた態度から一転して真面目な態度になり、その言葉に呼応するように幹部達も魔王のことを見るのだった。
「力量を見て、弱いのならその場で殺す。殺すのが難しいのなら、戦力を温存するために撤退する。こんな感じだ」
「移動手段は?」
「……リリアルを使う」
今はここに居ない魔王軍幹部。前に鬼族の里を襲撃し、英雄と初めて戦った幹部だ。
その上テレポートを使える数少ない人物だ。
「だがアイツは移動手段なだけだ、英雄と戦う者は……そうだな。アニムス、ヴィルトゥス、貴様らに命ずる」
リリアルはまだ謹慎中なこともあり、英雄と戦わせるわけには行かない上に、リリアルだと戦いにすらならないからだ。
その代わりに選ばれた二人の幹部。
一人は筋骨隆々で身長は2m以上はありそうな体躯のスキンヘッド、無愛想な顔をした巨漢であった。
そしてもう一人は、かなりの猫背で低身長。真っ黒の外套を着ており、顔が見えない程フードを深く被っている。全体的に薄気味悪い男だ。
「御意」
「ヒヒヒッ、わかりました、ヒヒヒッ!」
二人は一礼してから、準備のため魔王の広間を後にするのだった―――。
読んで頂きありがとうございます‼︎
結局戦う羽目になるんですねー、平和な日々は一体どこやら。どうか楽な戦闘になることを祈るばかりですね!
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