二十一話 威厳
真面目にしようかなと思いましたが、やっぱり無理でした。
「それでは話に入ると―――」
「……魔王様! お一つ質問があるのですが、お聞きしてもよろしいでしょうか」
魔王である少女が玉座に戻り、座ろうとした時だった。一人の幹部が手を上げて、丁寧な言葉でそう尋ねて来たのだった。
ギロリと魔王の瞳がその幹部を一瞥し、魔王が鼻を鳴らして、
「構わない、妾に申してみよ」
そう言った。
「それでは……。えー、魔王様。何故そのような格好を……?」
そして幹部は聞き辛そうに、頰を引き攣れさせながら魔王に問うのだった。
周りの幹部達が、「え、それ聞いちゃう?」「気になってたことだ!」「可愛い」と思っていたことを、その幹部は代弁してくれたのだ。
「……む? あぁこれか、なんだいつもの通りだ。奴が着ろ着ろと煩くてな、仕方なく着てやったのだ」
その幹部の言葉に魔王は少しだけ眉を寄せて疑問符を浮かべたが、自分の身に纏っているものを見て「あぁこれか」と、確かに気になるよなぁと自分でも思うのだった。
どんな格好かというと、頭には猫耳のカチューシャが着けられており、髪はツインテールで結ばれていて、首には首輪のようなショーカーが着けられている。口には八重歯が仕込まれ、両手には大きな猫の手を模した手袋が嵌められており、胸元が猫の顔で切り抜かれたおへそ丸出しの服。そして小さいショートパンツ、それから露出する黒色の尻尾。
普段の軍帽、軍服、軍靴の魔王が今日は猫のコスプレの人みたいではなく、人だった。
「意外と悪くないぞ?」
(確かに悪くないっ!)
と幹部の大半が心の中でそう首肯するのだった―――。
「―――近々、大きく動こうと思っている」
「ま、まさか……!」
「ついに! 戦争を再開なさるのですね」
それから暫くして魔王がそう口にすると、ブワッと一斉に湧き上がる幹部達や警備の者たち。
歓喜の声が響く中、魔王は静かに息を吸って、
「口を慎め。殺すぞ」
冷徹に冷酷に、永久凍土並みの声によってその場が静まり返った。
「はぁ……戦争はしない。今行ってしまえば、負けは明白だ。そうならないように、まずは【英雄】を潰す」
大きく深くため息をついて、魔王がトントンと指で肘掛けを何度も叩く。
そしてはっきりとそう言ってしまった。それらしい理由も付けて。隣に並んだ一人の幹部が、はぁと目頭を強く抑え、ため息をついた。
「英雄ですと……あの人間でしょうか」
「そうだ。力量を測りたいのと、潰すのに必要な戦力がどれくらいか……そうだな、ひっくるめて言えば強さを知りたい」
強く無いのであれば、隠密部隊の精鋭達を集めての暗殺でも良いのだが。
それがダメだったら時の別のプランを考えばならないのだ。ハッキリ言ってめんどくさい。
隠密なんかせずに、適当な戦力で戦わせようと言うのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
魔王様の着ている服の色は全体的にピンクと黒です!
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