十八話 同情
う〜ん、最近ヤンデレ要素が少ないですね……。
「ここは……」
カナデが葛葉の五歩ほど先で立ち止まり、葛葉も立ち止まった。
ふとカナデの足下に視線を向けると、そこには小さな墓石が建てられていた。その前には手向であろう花と、お供え物が置かれていた。
薄々勘付いている。ここがどこなのか。
「……これは私のお母さんとお父さんのお墓です」
「―――っ!」
やはりだ、やはりそうだった。
勘が良いというのもあまり良いことではないみたいだ。
「実はですね、今の家のお母さんは実母では無いんですよ。義理のお母さんなんです」
「……うん、知ってるよ」
「そ、そうなんですか……? ど、どうして?」
「村長から聞いたから」
カナデが意を決したように話し出そうとして、葛葉は知っていることを伝えた。
不意で予想外なことにカナデは驚き顔から戻らなくなってしまった。葛葉は頬をポリポリとかきながら、誰から聞いたかも伝えるのだった。
「もう、あの人は……! ……きっと全て聞きましたよね?」
たははと乾いた笑いを浮かべて、諦めたような表情で、カナデが一つ尋ねてきた。
「い、一応」
「そうでしたか〜。……どう、思いましたか?」
「どうって?」
「私の昔の話を聞いて、英雄様はどう思いましたか……?」
どう思ったか、カナデが予想しているのはきっと同情だろう。だが葛葉は同情はしなかった、でもただ一つ思ったことがある。
「強いなって……思ったよ」
「…………ぇ?」
カナデの予想とは全く違う葛葉の言葉に、周囲の時間が止まったように音が無くなった。
「大切な家族を失って、それなのにちゃんとして……環境が目まぐるしく変化するのに、どんな環境にも慣れてちゃんとして。すごく強いなって……きっと私なら、心が折れて何もしなくなったと思う。……うん、だから、強いなって、そう思ったんだよ」
「…………あ、う、え、あぁ……うぅ〜。え、英雄様も強いに決まってますよ!」
葛葉の言葉を聞いて次第に赤くなっていったカナデが、両頬を両手で押さえて恥ずかしそうに唸ってから、バッと顔を上げて葛葉に、何故か励ましの言葉を言うのだった。
「……うん、ありがとう」
カナデは葛葉と同じだ。全くでは無いが、重なる点が多い。
だからその気持ちを全部は無理だけど、多少は理解することはできる。だから葛葉は、
「あぅ、そ、それに英雄様も―――」
カナデがキョドりつつ更に葛葉のことを褒め称えようとした時だった、ガシッとカナデの身体が葛葉の体に引き寄せられ、そして囚われた。
読んで頂きありがとうございます‼︎
カナデがすごくヒロインしてますね!
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