十二話カナデの過去(2)
カナデには幸せになって欲しいですね……。
「物資を抑える役割をしていた糸が切れてしまったんです……それで大量の物資はあの子の両親へ雪崩のように崩れ落ちてしまいました。物資を退かし、すぐに魔法を使える者を呼び、治癒魔法を掛けましたが、所詮は低級の魔法……。あの子の親を救えることができなかったんです」
悔しそうに、村長は拳を強く握りしめた。
「私たちはあの子の目の前で、両親を死なせてしまったんです」
「……村長さん。あなた達が悪いわけではないと思います、その物資の固定を疎かにした担当者にも責任がある。そうでしょう?」
「……そうですね。確かにそうだ、そうなのですがやはり、無力だった自分を責めずにはいられなかった……」
今にも涙が出そうなほど強く強く目を瞑る村長。
葛葉は無力の悔しさを知っている。両親を失った時の気持ちも知っている。だが必ずしも、カナデや村長が失い、葛葉と同じ気持ちを抱いたかと言うと100%ではない。
感じ方は人それぞれなのだから。
「……それで私は罪悪感からかあの子を、里親が見つかるまでこの家で預かることになったんです。……その日々は、それはもう楽しくて楽しくて、仕方がなかったです」
「……」
「そして里親が見つかって、あの子は楽しく幸せに暮らしていく……と思いました。ですがそんな私どもの予想は全く当たらなかった」
幸せになるのかと、それで話は終わりなのかと、葛葉がそう思った矢先に村長の言葉に再び声を詰まらせた。
「死産ばかり続いていたある夫婦に引き取られ、あの子が九つになった歳に、その夫婦の間から赤ちゃんが生まれたんです。死産ばかりだったはずなのに、あの子を引き取って急に死産ではなくなったんです」
ホッと葛葉は一安心した。
村長の先ほどの言葉が引っかかっていたが、カナデは無事に幸せになったのだと。
それに里親であるその夫婦に幸福をもたらした。めでたしめでたしで終わればよかった。
「ですが今から二年ほど前にその里親の父が他界しました。一番下の子の熱がひどく、街に薬を買いに行っている途中に魔獣に無惨にも殺されました。……身体は損傷が深く、元々誰だったのか分からないほどでした」
「……」
この世界には魔獣がいるのだ。日本とは違って、外は危険が大量だ。
この手の話には良くあることだろう。
そう思いつつ、平常心を保っていることすら葛葉にはできなかった。そんなことが出来ていれば、葛葉が今ギュッと力強く拳を握りしめることなど、するわけが無いのだから。
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葛葉達のいる世界は、理不尽で残酷な世界ですからね、仕方がありません……。本当にカナデには幸せになって欲しいですね。
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