四話 小さい影登場
一人しか居ないですよね。
冒険者達がギルドにやってくる時間帯になり、段々と賑やかになってくるギルド内で葛葉達は話し合いをしていた。今回受けるクエストの報酬の額と、その山分け。と言ってもカナデと葛葉の二人だけで山分けすれば、良いのですぐにその話は終わった。
あとは道中に何があるのか、目的地は何処か等々。
それと、先程ギルド職員からもらった魔獣の生息域が書かれている書類を十分に確認したりと。
それらでかなり時間が経ったのだ。
まぁ経って貰わないと行こうにもいけないのだが。
「―――やぁやぁ、可愛い子ちゃん達ー? 元気かなー?」
そうこうしていると、葛葉達のテーブル席にやってくる小さい人影があった。
大仰に腕を上げながら、その人物―――緋月が声を掛けてきたのだった。
そんな緋月に葛葉達(律と五十鈴を除き)は、
「死ぬがよいのじゃ」
「うざ」
「チェンジで」
優しくもない言葉を投げつけるのだった。
「ねぇ、カナデちゃんは何処でそんな言葉を覚えたの?」
暴言を吐かれることは知っていた緋月は、予想外なカナデの言葉に微笑みをやめてしまった。
「葉加瀬さんじゃないんですか? 私は葉加瀬さんにお願いしたんですが……」
「あー、葉加瀬ね。葉加瀬なら新米日本人冒険者の教育で忙しいから無理だねー。だからボクで我慢しておくれよ〜」
ぶーっと口を3の形にさせて、カナデに詰め寄るのだった。
「私はなかったですけど……?」
「あー、葛っちゃんの場合は、まぁいいかなって」
「何ですかそれ」
「いやーだって葛っちゃんはラグスが居たじゃん? だからそうそう強い敵が来ない限り、危ない目には遭わないだろうなーって」
確かに最初の頃はラグスとパーティー? 師弟関係? になってクエストをこなしていたが。
それは適当過ぎるのではないかと、乾いた笑みを浮かべてしまう。
「ま、とにかく。ボクは葉加瀬に頼まれたから来たんだ。だからボクをあまり無碍にしない方がいいよ〜、馬車とか持って来れなくなりそうだな〜、皆んながそんな態度だと〜」
緋月がそう微笑みながら、全ての権力を持ったかのような顔で葛葉達を睥睨してくる。
煽られたらやり返す、それが緋月のポリシーなのだ。だがそれは、火に油を注ぐ行為とほぼ一緒であった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
うざっと言ったのは葛葉です。死ねとかチェンジとか言ってる二人より優しいですね!
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