三話 律の怖いもの
律に怖いもの⁉︎
―――ギルドに着き、中に入ってみるとまだまだ人は居らず、少しだけ伽藍堂だった。
これからやってくるであろう冒険者達のために、ギルド職員達がせっせと働いている。
「んー、居た」
そんな中一つのテーブル席の下で、フラフラピンピンと揺れたりして、意思を持って動いたりする髪の束があった。
そうアホ毛だ。
その揺れ動くアホ毛を見つけ、葛葉たちはそのテーブル席の下まで歩いて行った。
「お・は・よ・う〜、カナデ」
「あ、英雄様!」
葛葉が区切りながらそう言って、カナデと対面になる席に自然に座った。
五十鈴が葛葉に掲示板を見に行くと告げて、スタスタと離れて行くのに鬼丸も続いた。
そして残されたのは律のみ。
しかも律はカナデが怖いのだ。今さっきだって、普通の顔で普通の瞳で普通に朝食を食べていたのに、今は全てが異常になっているのだ。
目にはハートが浮かび上がり、葛葉を蕩けそうな顔で見つめて、艶かしくご飯を食べ始めたのだ。
(こ、怖いんですけどっ⁉︎)
そんなカナデが律は怖いのだ。
白目を剥いてドン引きしていると、ふとカナデの食べている朝食のメニューが気になったのだ。別に、美味しそうだとかお腹空いたとかではなくて。
脳みそをフル回転させ、律は深く深く考え込んだ。そしてやっと電球に光が灯った。恐ろしい事実に気が付いてしまったのだ。
(……そ、そのメニュー……朝、葛葉さんが食べてた朝食と丸っきり同じなんですがッ⁉︎)
その恐ろしい事実に気が付いた律は、あんぐりと口を開いて、更にドン引くのだった。
バッと葛葉に目線をやると、葛葉はあはは〜と何も考えてなさそうな顔で、カナデの食べる姿を眺めていた。
(やっぱりこの子怖い! は、早く葛葉さんに知らせた方が……っ‼︎)
葛葉の身の安全を守るためにも、このことはちゃんと教えるべきだ、とそう判断した律が葛葉に一歩歩み寄ろうとした時だった。
ギロッと、葛葉が「あの二人遅いねー」と視線をどこかへ向けた時に、カナデが律のことを鋭い目で見てきたのだ。
まるで口を閉じてろと言わんばかりだ。
律が全身を震わせてコクコクと瞠目しながら頷くのを見て、カナデはニコッと微笑むのだった。律には悪魔の微笑みにしか映らなかったが。
と二人がそんなことをしているのを、全て気が付いている葛葉が尻目に見ていた。
(大変だなー)
これから同じ馬車に乗ってまぁまぁな距離を移動すると言うのに、律のカナデに対しての様子に、葛葉は微笑ましく思いつつ頭を悩まされるのであった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
律の怖いものに最近になってカナデが追加されたんですよねー。そんなに怖いですかね?
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