五話 楽ばかりは駄目だよね
現実でも鑑定スキルがあればな〜と、常日頃思ってます。
不帰の森最浅部。緑の木々が生い茂り、葉擦れの音が心を癒してくれる。そんな中、葛葉は木の根元に咲いてある花や草をまじまじと観察して、ナイフで慎重に採っていた。そんな姿を後ろから眺めていた緋月は、木の葉の隙から見える青空眺めていた。
「クエストってのは嫌だね〜」
「……文句言いに一緒に来たんですか?」
黄昏ている緋月は、一生懸命にクエストをこなしている葛葉に聞こえるように言ってくる。それを聞き、葛葉は目をジーッとさせ振り向き、こちらも文句を言う。
「……薬草採取なんて初心者冒険者のじゃないの〜?」
「誰もやりたがらないようですよ? 初心者冒険者の人達はみ〜んな魔物退治の方がやりたいみたいですよ?」
「まったく、これだから最近の冒険者は……そんなに血に飢えているのかなー」
そういや私がラグスと会った理由も、新米冒険者達を助けに来た帰り道についでに助けてもらったっけか。まぁ、確かにこんな地味なクエストより、モンスターと戦った方地味でもないし、報酬もあるからな。
「……ふぅ、図鑑を見ながらだと大変ですね」
「アニメとかだったら鑑定スキルとかあるけどね〜」
「……鑑定スキルってあるんですか?」
腰を叩きながら背伸びをする葛葉は、緋月の便利スキルNo.1である鑑定スキルが、あるかも発言に問い掛ける。
鑑定スキルが有ればこんな図鑑を持ちながらしゃがみ込んで、雑草と本物を見比べる必要もないだから。
「ん? 無いよーそんな便利スキル。何でもありのチートアニメじゃあるまいし」
「上げて落としますか? 普通」
「あると入ってもその職業専用のしか無いからね〜。金属鑑定とか武器鑑定とかその他諸々……」
「それだったら人とかを鑑定するのもあるんじゃ?」
「無いねー」
何て不便な世界なんだここ。なろう小説とかの主人公が羨ましい! と歯軋りをし、拳をグッ! と握り締める。
「……っ。葛っちゃん。そこ――」
「え? ――ッ⁉︎」
棒立ちしていた葛葉に緋月が何か声を掛ける。葛葉が聞き返そうとした時。目の前に葉が舞い落ちてき、同時に爆発したように土埃が上がる。葛葉は咄嗟に後ろに回転して獣の攻撃を避けた。
「……っ、危なかった……」
「おぉ〜! 今日のパンツは水色の縞パンなにょか〜」
どうやら緋月が感心してたのがパンツの色だった。
ツッコミたいがここはグッと堪え、目の前の獣型モンスター『ブラッディグリズリー』を睨みつける。葛葉の眼力にグリズリーが唸り、威嚇をしてくる。
一触即発の状態で両者は膠着する。
「……」
『グゥゥ!』
いつどちらが襲いかかるか分からない状態。『ブラッディグリズリー』の平均Lvは2。
真正面から戦ったとしても、葛葉に勝ち目は無い。出来たとしても一矢報うくらいだろう。なら、緋月の目の前で使いたくなかったが……使うしか無い。
「……――ッ‼︎」
葛葉は覚悟を決めて、グリズリーへと斬り掛かった。
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