十五話 お金を貢いでくれる美少女だって⁉︎
この世界のどこかにいてくれませんかね〜、妄想が捗ります。(そう言うのでは無いですからね!?)
「はぁ。……それで、カナデ」
「は、はい!」
手間の掛かる鬼丸にため息を吐きながら、葛葉はカナデに声を掛けた。
目をキラキラさせ声を掛けてくれた葛葉に、犬の様に喜ぶカナデ。無いはずのケモ耳と尻尾が見えてきて、尻尾が激しく揺れているのが鮮明に見えた。
「これってさ、カナデの?」
「……は、はい」
先ほどのカバンをカナデに見せながら葛葉がそう聞くと、カナデが静かにそう答えた。
葛葉はそんなカナデを見つめて、静かにカバンをカナデに返した。
「同じ冒険者なら分かると思うけど……このお金は、命掛けで稼いだ物、でしょ? そんな大事なお金を、使うわけにはいかないよ」
冒険者はいつ命を落とすか分からない仕事だ、そんな仕事で得た金を私事のために使うなど、くれた人が良いと言っても自分は許さない。
「このお金は使えない。……カナデのために使って?」
「うぅ、ですが私は……」
葛葉の優しい声音に懐柔されそうになるが、カナデの願望は「葛葉のためにお金を貢ぎたい」という物だった。
改めてカナデは葛葉の優しさに惚れ直し、ますます葛葉のことが愛おしく、葛葉がカナデの憧れになってしまった。
「……のう、葛葉よ」
「ん、何?」
「貢ぎ金ならば、遠慮なく使ってやるのが礼儀じゃないのかのう?」
「クズ男思考すぎない?」
見なくても分かる様な疑問を秘めた、その声と顔で葛葉にそう言ってくる鬼丸に乾笑いが自然と出た。
思考が完全にヒモやクズ男のそれだ。
「お金の貸し借り程怖いものはないよ?」
これは前世で知った有益な情報だ。中学の頃、お金を貸し借りした一つのグループが喧嘩をして、そのまま絶交したという話を聞いたことがあった。
例え貢物だとしても、お金は受け取れない。
「明日、クエストを受ければ良いんだしさ」
「ふむ、確かにそうじゃが。……クエストは面倒ではないか」
「ニートだ……!」
不服そうな顔でそう言ってくる鬼丸に、葛葉はかつての自分を重ねた。
そう言えば自分も仕事が面倒臭さそうと思って就職活動しなかったなぁ、としみじみ思うのだった。
「……そんなこと言ってると、どうなっても知らないよ?」
「……? どうなると言うのじゃ?」
「…………家から追い出す」
葛葉の言葉に鬼丸がアホ毛を揺らした。
疑問符を浮かべてどうなるか試しに聞いてみると、葛葉の淡々とした声と蔑む様な目で、言われた鬼丸はゴーカートを押しながら振り返り、
「何をしておる、早くクエストをしに行こうで吐いてないか」
そう言って微笑んだ。
「……はぁ、一人で行かせようかな」
都合のいい鬼丸に葛葉はマジマジとそう考え込むのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
カナデはあの時に間一髪助けたという実績があるため、ここまで葛葉を好いていますが……普通に葛葉、女の子から人気が出る用事してますよ?
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