十三話 イカれた頭⁉︎
超遅くなりました!
「ん?」
「どうかしたかのう?」
どこか遠くから聞こえてきた気がした声に葛葉が反応し、鬼丸がアホ毛を疑問符にしながら葛葉へ尋ねた。
だが葛葉は気のせいか、と思うことにした。
「んー何でも無い……んだけど、何これ」
「何って……『パンダカー』じゃが?」
音を鳴らしながら進んでいくパンダの乗り物。
ジーッとパンダカーに乗りながら遠くへ行ってしまう鬼丸を見ながら、葛葉は辺りにも目線を向けた。
「…………パンダカーがある時点でおかしいのに、なんで小さいスプラッシュマウンテンがあるの?」
子供達がはしゃぐ方に目を向けてみれば、某ネズミの国にあるアトラクションが鎮座していた。
「……この世界じゃ何でもありなのかな」
現代技術がどんどん異世界の景観をぶち壊している。そんな光景を見て、ボソッと葛葉はそう呟いた。
「のう葛葉よ! あっちにゴーカートがあったのじゃ!」
「……そ、そう……は?」
もう滅多なことじゃ驚きそうに無いなと思っていた葛葉に電撃が走った。ゴーカートて、普通に産業革命を超越している物だ。
この世界の主流の交通手段は、馬車や竜車、飛龍に転移魔法のどれかのみだ。
それなのに、それなのにゴーカートがあったら大変なことになるだろうに決まってる。
「……疲れた」
あまりの異世界離れし過ぎている目の前の光景に、心の中でツッコミ過ぎて疲れてしまった。
「……葛葉よ。フルスピードで走るのが、わしの人生だった」
「何言って……って、は? ちょっと⁉︎」
鬼丸がそう言って、アクセルのペダルを思いっきり踏み込んだ。するとタイヤが空回りし、音を立てて走っていってしまった。
グングンと速度が上がっていくゴーカートに、道行く人々が驚いて神回避をする羽目になるのだった。
「……もう、やだ」
走り去っていった鬼丸へ伸ばしていた手を頭に当てて、深く大きくため息を吐いてからそう呟き、葛葉は鬼丸の後を追うのだった―――。
―――道行く人達に謝りながら葛葉はやっとこさ、鬼丸に追いついたのだった。
「はぁ……はぁ……な、何してるの……! 鬼丸っ……!」
ずっと走りっぱなしだった為か息を切らしている葛葉が、鬼丸の背中へ声をかける。
するとエンジン部分を触っていた鬼丸が声を掛けてきた葛葉へ顔を向けた。
「むぅ〜壊れてしまったのじゃ……」
「いやいや、どうするの⁉︎」
一応これはあの遊園地っぽいところの備品だ。
それなのに壊したって……もしかして弁償されるんじゃ……。例え安いと言われても十万とか五万以上だろう。
この前、五十鈴から生活費が逼迫していると聞かされたばかりなのにだ。
「どうするじゃと? ふっ、わしが誰だか忘れたか? わしは最強の鬼じゃぞ?」
「……っ、まさか」
「フッフッフッ、黙らせれば良いのじゃ‼︎」
「馬鹿っ‼︎」
ベシッと実力行使で無かったことにしようと考えている、イカれた頭を強く叩いた。
やってることがほぼ強盗だろ。
読んで頂きありがとうございます‼︎
ほんとにギリギリでしたが、投稿はできました!
鬼丸はイカれてはないですよ? ただ頭が弱いだけです。
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