七話 強さ故の縛り
最強ですからね!
「……緋月?」
「あ、めんご」
今にも殴り掛かりそうな緋月に、葉加瀬は冷たい声を放ち、緋月は忘れてたと言いたそうな顔をしながら拳を下ろした。
「ま、とにかくその二人はボクたちが保護するさ」
「……日本人をどうして保護するんですか?」
葛葉はふと疑問に思い尋ねてみるのだった。
日本人なら保護をしなくとも生きていけるだろう。チート能力を持ってんだろうから。
「いや、この世界じゃすぐ死ぬさ。だが今回の能力はどうやら強力みたいだろうから、半日経っても彼らは死ななかった」
「えぇ……どんだけこの世界ってどんだけ厳しいんですか」
「君が想像してる以上だろうね」
チート持ちでも簡単に死んでしまう異世界とか嫌すぎる。
「その二人の与えられた能力と、強さをギルドで測ってから、色々と教えて冒険者にさせるんだ」
「そんなことを毎回してるんですか?」
「あぁ、そうだね」
そういえば葛葉も最初の頃は大体そんなもんだった気がする。
まぁ下着を緋月と買いに一緒に行く、なんてことは絶対に違うだろうが。
「……仕方あるまい、今はこの怒りを抑えてやるのじゃ。じゃが……次にこの街で会ったとき、どうなるか分かっておるな?」
殺意を滾らせて言う鬼丸に対して、脅しをされている男が、下手したら首が捥げるんじゃないかと思うくらい縦に振り出すのだった。
「と言っておりますが、どうしますか? 葛葉さん?」
鬼丸の脅しに肩を竦めさせていた緋月が、葛葉の隣に移動してそう尋ねてくると、葛葉は鬼丸のことを見やった。
「何をするの? 鬼丸?」
「……殺―――」
「んー?」
何をするか、ただそう聞いただけなのだが、なぜか鬼丸は怯えに怯えていた。
「も、もちろん嘘じゃ! そうじゃな、半殺し―――」
「んー⁇」
「ぃ……も、もちろん嘘じゃぞ⁉︎」
キッと葛葉が鬼丸を睨むとギクッと飛び跳ねるように驚いて、慌てながら言葉を撤回する。
オドオドと「どうしよう、どうすれば」と顔を青ざめさせている鬼丸をみて、怯えていた男も引いていたギルド職員たちも目をパチパチとさせていた。
「……ぐ、そ、そうじゃ! デコピンじゃ! デコピン一発で勘弁してやるのじゃ! どうじゃ、文句はなかろう?」
「威力は〜?」
「……」
殺すと半殺しから、相当グレードダウンして辿り着いたのがデコピンだった。男はホッとするが、葛葉は鬼丸へ問い詰まった。
「か、加減……するのじゃ〜」
「腫らさないでね?」
「そ、そんな⁉︎ 堪忍なのじゃ! 元々、わしの力ならばただのデコピンでも、ショットガンくらいの威力になってしまうのは知っておろう⁉︎」
「だったら、大人しくすればいいでしょ?」
「……う、ぐっ! うぅ! わ……わか、分かったのじゃ……」
かなりの葛藤の末、鬼丸は大人しく醸し出していた殺意を抑えるのだった。
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最強を完全に飼い慣らしている葛葉が……?
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