一話 悪夢と穏やかな朝
遅くなりましたが、無事投稿できました!
蛇口から水が勢いよく流れ、水が排水溝の中へと流れて行く。
ドクン、ドクンと心臓の音が耳のすぐ近くで聞こえるかのような感覚を味わいながら、葛葉は顔を洗うのだった。
「……葛葉様、ご気分はどうですか……?」
顔を洗っていると洗面所の扉を少し開けて、心配そうに葛葉を見つめる五十鈴が声を掛けてきたのだ。
葛葉は近くにあるタオルを手に取って、顔を拭いてから、
「大丈夫だよ」
微笑んでからそう答えた。
―――葛葉は悪夢を見たのだ。
昨日この家に帰って来て、律が作ってくれた夜ご飯を食べて、お風呂に入って寝て。いつも通りのナイトルーティンだったはずだが、なぜか悪夢を見たのだ。
しかも内容は凄く嫌なものだった。微かにしか覚えてないが、葛葉の大切なものが目の前で失って行ってしまう気持ちだけは鮮明に覚えている。
「ふぁ〜……眠い……」
洗面所からリビングに移動して、ソファに座りしばらくしてからボソッと呟く。
今日は珍しく早起きだったのだ。
「もう少し寝ていても良いのですが……」
「あ〜、でも良いかな。二回は見たくないし」
キッチンに向かう途中の五十鈴が、葛葉を気遣いながらそう言ってくれるが、葛葉は起きることにした。
「朝食はあと三十分ほどで作り終わりますよ」
「ほんと、なら気長に待つねー」
トントンと材料を包丁で切る音が聞こえ始め、フライパンで何かを炒める音も聞こえてくる。
五十鈴が居ると毎日が頼もしい。律も同じだが。
ふんふんふーんと鼻歌を歌ってると、階段を降りてくる音が聞こえて来た。
そして、しばらくしてすぐにリビングの扉が開けられた。
「……おはようございま〜……す」
挨拶の途中に欠伸をしながら、リビングに入って来たのは律だった。
目を摩りながらリビング全体を見て、しばらく目を瞑ってから、
「く、葛葉さん⁉︎」
と声を上げ、目を見開いて驚くのだった。
そんな律に葛葉も同様に「え?」と驚いた。
「きょ、きょきょ今日は早起きなんですか⁉︎」
「う、うん……?」
何をそんなに驚く必要があるのか、と葛葉が思ってるとカァーっと律の顔が、ヤカンのような音と共に真っ赤になってしまった。
葛葉は先程からの律の反応に、目を点にして疑問符を浮かべていた。
「え、ぁ、う、うぅ!」
バッ! と勢いよくリビングの扉の方に振り返り、扉を開けてリビングの外に出て行ってしまった。
バン! と扉が大きな音を立てて閉まるのだった。
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一昨日や昨日、今日はいつもの時間に投稿出来ませんでしたが、明日は投稿出来ますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです!
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