二十話 愛のあるストーキングはストーカーですか?
タイトルは本編に出て来ませんが、まぁいいですよね!
「――うぅ私もお腹空いてきました……」
窓から店内を覗き込み、葛葉達を見つめる怪しい影。それは律だった、あの後引き続き葛葉達の動向を監視していたのだ。
ぐぅと鳴るお腹に手を置きながら目端に涙を溜める。
本来なら任された家事をやって、昼ごはんを食べてるはずだが、二人のことが気になりそれどころではないのだ。
「……私は何をしているんでしょうか」
ふと我に帰り空を見上げながらそう呟いた。
あははとから笑いが自然と出てきて、もう帰ろうかと思った時だった。
「ひゃう―――っ⁉︎」
ツンツクツンと後ろから両脇腹を誰かに、人差し指で突かれたのだった。
ピクンと身体が大いに跳ね、変な声も出てしまい恥ずかしさ故に頬を赤くさせながら、後ろへ振り返った。
「……こんにちは!」
するとそこには、いつも朝に葛葉に弁当を持ってくるカナデが居たのだった。
挨拶をしてからキョトンと小首を傾げて律の顔を覗くカナデ。そんなカナデとは違って律は、あわわと小刻みに手を震えさせていた。
「こ、こんにちは〜……カナデちゃん」
「こんにちは! ……律さんは何しているんですか?」
一応面識はあるのだが、面と向かっての、一対一は律は初めてでかなり緊張してしまう。
「あ、いえ、私は少し野暮用で」
「そうなんですかー」
律はビクビクしながらカナデの言葉に返事をした。
「そ、そうなんだよ〜……そ、そう言うカナデちゃんは?」
「・・・私はただ見かけただけです」
なぜ、律がカナデにビクビクしているのか、その理由は、単純にカナデが怖いからだ。
葛葉の背中からカナデを見ていると、カナデが葛葉のことを見る目や表情が異常過ぎるのだ。
「……? 何か隠してます?」
ふと不自然なまでに手を後ろで組んでいるカナデに、律は不思議に思い尋ねてみた。すると、微笑んでいたカナデの顔が徐々に崩れて行く。
そして気不味そうに目を地面にやったり、空に向けたりして泳がせる。
「カナデちゃん?」
「…………そ、それでは律さん! 私はこれで!」
詰め寄ってくる律に危機感を覚えたのか、カナデが、くるりと身体の向きを変えて歩き出そうとした時だった。
ガシャンと何か硬いものが地面に落ちる音が薄暗い路地裏に響いたのだ。
「……」
「……」
見てみるとそれは最近になってこの街にもやって来た、写真を撮る魔道具『カメラ』だった。
確か貸出は一時間一万五千フェルだったはずだ。
「カナデちゃん……?」
固まってしまい一ミリも動こうとしないカナデの代わりに、律がカメラを拾うと、何かしらのボタンを押してしまったのか、画面が変わったのだ。
変わった画面に映るのは、今日の朝から今に至るまでの葛葉の写真だった。
しかも、そのどれもが美しく撮られていたのだ。
「……カナデちゃん? ―――っ⁉︎」
「…………」
画面から恐る恐る顔を上げて、目の前で固まっているであろうカナデを見てみると同時、律は腰を抜かしてしまった。
固まっていたはずのカナデは、音もなく律の目の前に立っており、光の無い瞳で見つめて来ていたのだ。
「……律さん」
「は、はい⁉︎」
「このことは秘密にして下さいね?」
「え? え〜っと……そのぉ」
「秘密にして下さいね?」
「ひゃ、ひゃい……!」
律はカナデの向けてくる光のない瞳の、目ん玉が飛び出しそうな程の目力に、ついつい負けてしまった。
「――何してるんだろ」
と何を食べるか決め終わり、とっくのとうに注文を済ませた葛葉は、窓の外で何か話している二人を見ながら、ボソッと呟いたのだった。
読んだ頂きありがとうございます‼︎
この前も書かせて貰ったのですが、いつもの時間に投稿が出来ない日がこれから幾つもあります。そして今のところ分かってるのは、明日と明後日、明々後日になります。いつもよりだいぶ遅い時間か、早い時間に投稿すると思いますのでご理解お願いします!
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