十八話 腹が減っては!
戦が出来ぬですからね! デートも一緒の戦でしょうから!
「ん、お腹空いてきたね」
クスクスと笑い合っていると、ぐぅ〜っと葛葉の腹の虫が鳴いたのだった。
お腹を摩りながら葛葉は周囲を見回した。もうそろそろ昼時の時間だからか、大通りの人の数が少し増えてきていた。
爪先立ちで見回したところ、ちょうど良さそうなお店を見つけた。どうやら洋食レストランぽい。
「あそこにする?」
店を指して、隣の五十鈴に問い掛けると五十鈴は葛葉が指している方を見てから、少しの間を開けて、
「はい、構いません」
そう微笑みながら答えた。
「んじゃ、れつらごー!」
葛葉がそう言い歩き出そうとした時、葛葉が五十鈴の手を取りギュッと逸れないよう握ったのだ。
「……ッ!」
五十鈴は、そんな突然のことにドキッと胸が鳴り、頰が赤くなっていってしまう。
「人多くなってきたから」
振り返らずに歩きながらボソッと葛葉が呟き、五十鈴の手を、引き寄せるかのように優しく引っ張った。
「……はぃ」
五十鈴は顔を俯かせながらそう力無く返事を返すのだった。
だが手を繋いでいた時間はほんのちょっとだった。葛葉達と店の距離はそこまで遠くなく数十歩、歩いたら着くくらいだったのだ。
すぐに葛葉の手が離れてしまい、少しだけしょんぼりしてしまうが頭を振って気を取り直す。
そんな五十鈴を不思議に思いながらも、葛葉は五十鈴が気を取り直したくらいで、お店の扉を押した。
「―――いらっしゃいませ〜‼︎」
店内に入ると目の前を、凄まじい数の食器を器用に両手で持ったウェイトレスのお姉さんが、挨拶しながら通っていった。
ふと視線を奥にやると、かなり席が埋まっていた。
「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」
大変そうだなーと思っていると、えらく元気な小柄な店員が声を掛けてきたのだ。
一瞬、その小柄さ故に驚いてしまった。
「あ、二人です」
「二名様ですね! それではご案内します!」
テクテクと小柄な店員が歩いて行くのを、驚いていた葛葉がハッと正気に戻って後を追った。
通されたのはテーブル席だった。
「ご注文が決まりましたら、お声掛けてして下さい。それではごゆっくり!」
店員はそう言って去って行った。
「……この街って皆んな個性が濃いよね」
「……?」
去って行く店員の後ろ姿を見ながら、葛葉がボソッと呟くが五十鈴にはピンと来てないようだった。
二人はメニュー表に書かれている食べ物を一通り見てから近くの店員に声を掛けた。
幸いにも、ここのお店の商品名は普通で良かったと、葛葉は内心そう思うのだった――。
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今日は早めですね! ですが今後は投稿時間が九時過ぎになってしまうかもです! 一応X(旧Twitter)で報告はしますが出来ない日もありますでしょうから、そう言う日は優しい目で見守って下さい!