十四話 邪竜【八岐大蛇】
先に言うと【八岐大蛇】を含めて邪竜は後三体ですね。
「邪竜ってなんですか?」
「……え、葛葉様? 知らなかったんですか……?」
「え?」
葛葉の発言にギョッと驚き、恐る恐る葛葉に尋ねる五十鈴。
極東の邪竜のことを知らない人物は世界のどこを探しても、きっと今目の前にいる葛葉のみだろう。
「極東に封印されていた邪竜がかなり前に復活したんですが、今は休眠状態になったと……」
「復活?」
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜……ま、いいか」
五十鈴の詳しい話を聞き、さらに詳しく追究を求める葛葉に、千佳は腕組みをしながら濁点が付いてそうな声で唸ってから、憑き物が取れたように起き上がった。
そして、こほんと咳払いをしてから極東の邪竜【八岐大蛇】の話をし始めるのだった。
――今から何百年も前、いやそれよりさらに前。極東の地に死と混沌をもたらした最悪の竜。極東の人々が一丸となり討伐に赴いたが、いずれも助かったのは数人で討伐すらも出来なかった。
そして邪竜の脅威が都まで届きそうになった時、当時の陰陽師全ての力で邪竜に呪いを付与し、邪竜を永遠の眠りに就かせたのだ――。
「そして伝承では八つの首を有していて、一本を斬り落とそうが再生し、八つの首は八つの属性魔法を有している。……って」
「八つの属性って……全部じゃないですか⁉︎」
「そ〜だねぃ。多分、それが厄介だから今も討伐出来てないんだと思う。私は戦ったことないから、どれくらい強いのかは知らないし」
腕枕をしながらギィギィと椅子でシーソーを始める千佳。千佳が冒険者時代の時は復活してなかったようだ。(ポンポン復活されては困るが)
「……ん? どうして今回復活しちゃったんですか?」
「……そ〜れが分からないみたいなんだよ。復活の要因はなんなのか、人為的か呪いの効果が切れたのかetc……」
「それまではずっと封印できていたんですか?」
「そだよ」
葛葉の物々しい顔とは真反対に、千佳はお気楽能天気みたいな顔で「正解ー!」と言ってくる。
今まで何事もなく封印できていた竜がいきなり復活? 不自然なことこの上ない。アニメとかなら絶対復活させる暗い描写が流されるだろう!
「ま、重く考えなくても大丈夫だと思うよ? ここから極東なんてすっごく遠いし……それに今の君じゃ死ぬだけだよ?」
「……っ!」
その千佳の言葉には力があった。葛葉の思いを無碍にする力が。
千佳や上級冒険者、チート持ち転生者達にとって、葛葉のコレまでの成長は微々たるものでもなく、ただの塵芥なだけだった。
「だから、変な気は起こさないで欲しいかな? 君には生きてもらいたいし」
「……」
千佳の言葉に言い返すこともできず、葛葉はただ拳を握った。極東は、自分の仲間の大切な場所なのにだ――。
読んで頂きありがとうございます‼︎
前書きでのほぼネタバラシみたいなのはおかしいのではないか? と思っている人がいると思いますが、実際そうですね。ですが都合が合わないので。
それに邪竜一匹でも居ると世界がやばいですからね。そう言う設定です。
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