十二話 あんなの
あんなのって誰でしょうか……。
「……本当に良かったんですか?」
「良かったって。デートに誘ったのは私なんだし、お金を出す義務があるから」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」
玄関から出て来た二人は、話ながら門の外へ向かって歩いていく。
葛葉の私服とは反対に、五十鈴の私服はちゃんとしていた。普段の五十鈴が着てる服装とは違って、私服はその人の個性が現れる物であり、今五十鈴が着てるのも個性があった。
「どこで売ってるの? それ」
「服ですか?」
「そう」
葛葉が五十鈴の来ている服を上から下に見て、下から上にまた見てからそう尋ねた。
「この前葛葉様の私服を緋月様が強引に押収して変えようとしたことがありましたよね?」
「あーあったね〜」
「その時に渡された服です」
「……誰から?」
「緋月様です」
「やっぱりかぁ……」
葛葉は五十鈴のその答えに何処かすごく納得してしまった。いや理由は明白だ、なぜならスカートの丈がめっさ短いのだから。
「あの人はどうして捕まらないのかな〜」
「……仮にもギルド長ですからね。流石に権力は使ってはいませんでしょうけど、立場上捕まえるのは難しいと思います」
ギルド長が務所にぶち込まれるなど、本当に文字通りの前代未聞だろう。
だがやってることはもうセクハラとかの度を超している。毎朝葛葉の布団の中にいるため、不法侵入が適応されるだろう。
「ま、あんなのよりも」
「……あんなの?」
あれ? 一応特訓を受けさせてもらってなかったっけ? とふと疑問に思ったが、五十鈴は気のせいだろうと思い、追求はしなかった。(一方で、あんなのはくしゃみをするのだった)
「デートを楽しもう?」
「はい、そうですね!」
葛葉の振り向きざまの言葉に、五十鈴は快く返事をするのだった。
二人がまず最初に向かったのは、かなり……いや大分お久しぶりの【リリナ武具店】だった。
景観も前とは変わらず――まぁ数週間振りくらいしか経ってないが――看板には共通語で【リリナ武具店】と書かれていた。
「何か買うの?」
「いえ、買うのではなく修理をお願いしに来たんです」
「へぇ〜……確かに五十鈴のは消耗品だもんねぇ」
五十鈴が【虚空庫】から超大型の盾を取り出したのを見て、葛葉はそっかと納得した。
その盾はかなりボロボロで、所々欠けている部分もあったり、凹んでいたりもしている。
「定期的に修理してるの?」
「いえ、今回が初めてです」
「あ、そうなんだ〜。結構長持ちだね?」
相当前にオーダーメイドで買ってから、ず〜っと修理をしてなかったのに、ボロボロ程度で済んでいるのだからすごい。もらった日から今日までに、凄まじい戦いもあったはずなのに、全然まだ使えそうなのだから。
読んで頂きありがとうございます‼︎
緋月はもう信用がないですね! 本当なら五十鈴の服は具体的書こうと思ったんですが……自分では不可能だと思い、結構あやふやになってしまいした。少しは勉強するつもりです!
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