第一話 五十鈴の一日
早いですね〜
五十鈴の朝は早い。誰よりも早く起きて、自分の布団を綺麗に畳んでからリビングに向かい、朝食を作り始める。せっせと四人分の料理が物凄い速さで作られていく。
そんな時、ガタンと二階から音が鳴った。どうやら、また鬼丸がベッドから落ちたのだろう。とそんなこと思っていると、「あぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」という叫び声が外から聞こえ、庭に何かが落ちる音が響いた。
声の主は勿論のこと、緋月だった。
「―――おはよ〜」
リビングに取り付けられた小窓から、頭から地面に突き刺さり直立している緋月を眺めていると、後ろから声を掛けられた。
五十鈴は振り返り、お辞儀してから、
「おはようございます、葛葉様」
と挨拶するのだった。
その仕草はまさに貴族の一流メイドのようだった。
「朝ごはんは後どれくらい?」
「あと少しです。……良ければ、律様と鬼丸様を起こして頂けませんか?」
「うん、りょーかーい」
眠気眼を手の甲でゴシゴシと搔きながら葛葉は、身体を反転させて二階へと向かって行った。
階段を上る音が鳴り、しばらくして静かになってしまった。
「……寝てませんよね?」
天井を見上げて五十鈴は心配そうに呟いた。
―――それから暫くして、ホカホカの料理が並べられた机を眺め一息吐いてから、五十鈴はくるりと体の向きを変えてリビングの扉に向かっていく。
お願いしてから一向に来る気配がない葛葉達の様子を見にいくのだ。
「葛葉様は朝弱いですから……寝てるかも」
ギルドの部屋を借りていた時は、毎朝葛葉の世話をしていたのが五十鈴だ。故に葛葉が朝弱いのは勿論のこと、寝起きの時や寝ぼけてる時が可愛いのも知っている。
一抹の不安を感じながら、五十鈴は階段を登ろうとして顔を上げた。そして目を見張ったのだ。
「……ち、力尽きてる」
何故なら階段の手すりに手を掛け、膝を床に突いて顔を俯かせながらぐぅぐぅと寝息を立てている、鬼丸が居たからだ。
「というか帰ってたんですか……」
昨日は結局帰って来ることなく、葛葉も律も五十鈴も就寝してしまったのだ。まさか帰ってきているとは思っていなかった。
「……鬼丸様、鬼丸様。起きて下さい、ここは寝る場所ではないですよ?」
「……ぁう? にょ〜わっひゃっへるじゃ〜」
寝惚けているのが一発で分かるような言動で、五十鈴に抱きついて来る鬼丸。五十鈴は、はぁとため息を吐いてから、鬼丸の身体を持ち上げお姫様抱っこして、階段を降りていった。
そして洗面所に連れて行き、手を洗わせてリビングに連れていくのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
気付けばもう第四部二章です! 物語の進行がこんなに早くていいんでしょうかね〜、いやそんな早くないですかね。ほぼオリアの街での出来事ですからね。
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