十九話 お話と一世一代の
なぁんの一世一代なんでしょうかね!
「…………そんなに心配しないで、律」
ふと葛葉が顔を上げて、微笑みながら後ろへ振り向いた。その視線の先には、パジャマ姿の律が不安そうに葛葉のことを見つめていた。
「で、ですが……!」
「大丈夫だから」
律は見ていた、聞いていた、知っていた。
葛葉が無理をしているのを、葛葉の背中にはいつも重荷が載っていることも、葛葉の放つ声が苦しそうなのも。
葛葉は嘘をついている。誰の得にもならないし害にもならない、そして自分でさえも何も得ず損をする嘘を。
「葛葉さんは、まだ! 辛い思いをするんですか……⁉︎」
「…………私が【英雄】である限りずっとね」
律の問いに、葛葉は淡々と答えていく。あの時、確かに吹っ切れた。
だがそれまでだ。葛葉は淡々と【英雄】としての使命をこれからこなしていく。
「葛葉さんだけが……辛い思いをするなんて、私には耐えられません! 私は―――……」
なぜなら、自分はあなたが好きだから。そう口から出掛かってしまい、急いで口を塞いだ。
その覇気に、葛葉は瞠目した。今のはどんなに鈍感だといえ気付くだろう。(ライトノベルの主人公でなければ)
「そっか……そうだったんだ。…………ねぇ律、私のことどう思ってる?」
「え……えぇ‼︎」
律の想いに気が付いた葛葉が、にししと微笑みを浮かべ口に手を当てながら律に聞き始めた。
その顔はまさに小悪魔のようだ。律は、葛葉の問い掛けにボッと顔を真っ赤にして、「あ、あぇ、えぁ、うぇあ?」と上手く声が出せなくなっていた。
目をぐるぐるとさせて、混乱しまくる律を見て、葛葉は小悪魔のような微笑みをさらに浮かべた。
「す……すっ……! しゅきです!!」
(あ、噛んだ……)
葛葉の猛口に耐え切れなくなり、律は目を瞑って勢いよくそう言ったのだが、盛大に噛んでしまった。
するとカァーっと好調していた頬が、さらに真っ赤になってしまった。瞑っていた目を開けると、うるうると涙が浮かんでいた。
「…………殺して下さいぃ〜!」
心の内がバレ、一世一代の告白を噛んでしまったのだから、これ以上ない生き恥だ。
ポカポカと葛葉の身体を叩きながら、律はそう泣きついてきた。
「ごめんごめん、律が可愛かったからさ……。でも、そっか、そうだったんだね」
律の両肩に手を置いて、ポカポカと殴ってくる律を離して、葛葉は目を和ませた。
「そうか……律が、私のことを気に掛けてくれるのは、そう言うことだったんだね」
それは律に限ってのことじゃない、五十鈴も鬼丸もそうだ。
「じゃあさ、律。……それに五十鈴」
「……っ?」
「―――気付かれないと思ったんですが」
そう言いながら暗がりから出て来る五十鈴に、律はいつからそこに⁉︎ と思ってそうな顔で驚くのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
ここはすき焼きって行った方が良かったですかねw?
律はやっぱり一番最初に攻略されるキャラが会いますね!
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