十四話 リラックス
「……なんでそんなに泣いてるんですか」
五十鈴は眉を寄せて、号泣している律を見ながら葛葉に聞いてきた。
「いや……なんか」
「……うっ、ぐずはざんのお話が……悲じぐでぇ」
律はというと最早まともに喋ることすら出来なくなってしまっていた。葛葉と五十鈴は二人して「えぇ……」と呟き、ちょっとだけだが引いてしまった。
「どんな酷い人生ですか……こんなに人を泣かせられるって」
「酷い……のかな?」
五十鈴のその言葉に、人を泣かす程の酷い人生を送った当の本人である葛葉も、う〜んと唸りながら考え込んだ。
両親を早くに亡くしたくらいで、あとは普通の人生なはずなのだが……。
「……少しリラックスしに行ってみては?」
葛葉が、自分の送った人生は酷かったのか? と考えていると五十鈴が、泣きじゃくっている律を見ながら、そう葛葉に提案してきた。
「そう、だね。……少し帰るの遅れるね」
「はい、お夕飯の準備をして待っています」
五十鈴はそう言ってから一礼して、屋敷の方へと歩き出した。葛葉はその動作を一通り見てから、ふぅっと浅く深呼吸をしてから、まだ涙をポロポロ溢している律へ向き直った。それを疑問に思った律が、俯かせていた顔を上げて、向き直ってきた葛葉のことを見た。
「少し歩こ?」
葛葉はそう言うと、そっと律の手に自分の手を伸ばして、優しく包み込んだ。律はドキッと、途端に胸が急に苦しくなってしまう。
「……は、はい」
葛葉に手を引かれ、二人は屋敷とは違う方向へと歩き出した。
その時、葛葉には全く分かるはずもなかった。手を引いている少女は、既に涙が引いていて、胸に手を置き、頬を真っ赤に染めているなど。
スタスタと歩き続け、夕日が完全に沈んでしまいそうな頃、二人は全く人通りのない道で、まだ手を繋いで歩いていた。
「少しは落ち着いた?」
「う、は、はい……」
肩を並べながら同じ速度で歩き続ける。流石にもう涙も枯れてきたのか、ポロポロと流れていた雫は、そう簡単には流れない。
だが目元は赤くなり、涙の跡も残ってしまっている。
「……律」
「は、はいぃ?」
涙は流れなくとも、完全に泣き止んだ訳ではない。言葉尻を伸ばしながら、律は葛葉の声に返事をする。
「私の過ごした人生は、そんなに悲しいのかな?」
「そんなことはっ! …………ただ私には考えられないんです。親が、大切な人が目の前で居なくなる事の辛さが、悲しさが」
「……」
途端に葛葉は、胸の中の何かが埋まっていくような、そんな感覚を感じたのだ。
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いい題名が思いつかなかったもので……あまり気にしないで下さい!
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